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2018.04.16.Mon

カテゴリー:不動産の税金は××じゃ!「マンション所有者が犯しがちな修繕積立金に対するベタすぎる間違いとは?」

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 今日は、投資用マンション等を所有する個人または法人がその会計処理において勘違いしがちな「修繕積立金」についての話です。

 

 

 

税法上必要経費として認められる基準とは

 

 

 所得税法上、必要経費については次のように規定されています。

 

 

第37条 (必要経費)

 その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。) の額とする。

※一部改編

 

 

 ここでポイントになるのが、カッコ書きに「その年において債務の確定しないものを除く」

とあるように、その費用に係る債務が確定しているのか否かという点です。

 

 

 このポイントについて、所得税基本通達に詳細が規定されています。

 

 

 37-2(必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定)

 法第37条の規定によりその年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき償却費以外の費用で、その年において債務が確定しているものとは、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。

 

 (1) その年12月31日(年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この項において同じ。)までに当該費用に係る債務が成立していること。

 (2) その年12月31日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

 (3) その年12月31日までにその金額を合理的に算出することができるものであること。

 

 

 

 不動産収入を得るために要した費用で、上記の要件を満たして債務が確定していると認められるものは、その年度の必要経費に算入できるということです。

 

 

 

修繕積立金は支払った年度の必要経費となるか

 

 

 さて、ここからが今日の本題です。

 

 マンションを所有していると管理費と共に支払わされる修繕積立金は支払った年度の必要経費となるのかどうかということを考えていきたいと思います。

 

 まず、不動産収入を得るために要した費用に該当することは問題なさそうですよね。

 

 問題は、その債務が確定しているものかどうかという点です。

 

 上記の通達に沿って考えると、「(1)債務が成立している」かどうかについては、大概マンションの管理規約において「区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費および修繕積立金を管理組合に納入しなければならない」と定められているため、債務が成立しているといえそうですね。

 

 (2)を飛ばして(3)はどうでしょう?

 

 「(3)その金額を合理的に算出することができる」かどうかですが、こちらも規約等にてはっきりと金額が明示されているため問題ないでしょう。

 

 問題は(2)です。

 

 「(2)具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している」かどうかですが、修繕積立金に関する具体的な給付をすべき原因とは、言うまでもなく実際の修繕等でしょう。 

 

 修繕積立金がどのような用途に使われるのかについても管理規約に記載があるはずですが、

参考までに国土交通省が定める「マンション標準管理規約(単棟型)」で見てみましょう。

 

 

 (修繕積立金) 第28条

 

管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるも のとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。

 

一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕

不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕

敷地及び共用部分等の変更

建物の建替え及びマンション敷地売却に係る合意形成に必要となる事項の調査

五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のた めに特別に必要となる管理

 

 

 

 要は、これらが上でいう具体的な給付すべき原因となる事実ということですね。

 

 つまり、本来修繕積立金はこれらの事由が生じて初めて債務確定するということです。

 

 では、毎月管理組合等に支払う修繕積立金については、その修繕積立金が実際の修繕等のために取り崩されて初めて(債務確定となり)、必要経費に算入されるということになりますが、本当にそれでいいんでしょうか?

 

 

 

賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い

 

 

 この問題に関して、国税庁HPの質疑応答事例でタイトルそのまま「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」が載っています。

 

 

 

国税庁HP 質疑応答事例「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」

 

 

【照会要旨】

 Aは、賃貸の用に供するためにマンションの1室を購入しました。

 

 当該マンションの区分所有者となったAは、その管理規約に従い、管理組合に対し修繕積立金を毎月支払っていますが、Aが支払った修繕積立金は不動産所得の計算上、いつの年分の必要経費に算入することができますか。

 

 

【回答要旨】

 原則として、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になりますが、一定の要件を満たす場合には、支払期日の属する年分の必要経費に算入して差し支えありません

 

 

 

 「むむっ!?」

 

 支払期日の属する年分の必要経費に算入して差し支えありません?

 

 どういうことでしょうか?

 

 先に条文に沿って確認すると、確かに実際の修繕等が発生して初めて必要経費に算入されると読めましたけど・・・

 

 この質疑応答事例の解説で、この疑問について次のように解説されています。

 

 

 

 修繕積立金は、区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであるとともに、管理規約において、納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です。

 

 そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えないものと考えられます。

 

① 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること

② 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと

③ 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと

④ 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること

 

 

 これ、いかがでしょうか?

 

 すべて言わずもがなの内容ですよね。

 

 先に紹介した標準管理規約にも謳われています。

 

 実際マンションオーナーの方は、ご自身が所有するマンション等の管理規約を眺めてみてください。

 

 きっと上記の内容を満たす内容の記載があるはずです。

 

 正直ほとんどのマンションの修繕積立金が、この要件を満たしますよね。

 

 ということは、国税庁曰く、

 

 この質疑応答事例のケース同様、ほとんどの場合「原則として実際に修繕等が行われ、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になりますが、上記①ないし④のいずれの要件も満たす場合には、支払期日の属する年分の必要経費に算入して差し支えありません。」ということです。

 

 しかし、ようようこの①〜④の要件を見ていると、これら全てを満たせば先の通達の(1)と(3)を満たすことはわかっても、やはり(2)の要件もクリアすることの説明にはなっていないように思います。

 

 そんなこと考えているのは僕だけでしょうか。

 

 それとも通達は所詮通達だということでしょうか笑

 

 しかし、実際初めて見せていただいた不動産所得の確定申告書の貸借対照表に修繕積立金という勘定科目が資産として計上されているものをチラホラ見かけます。

 

 もちろん、原則的な処理としてそれはそれでいいんですが、わざわざ国税庁が(ちょっと強引に解釈して)支払時の必要経費でいいよと言ってくれているのにそれを利用しない手はないですよね。。

 

 

 

 

*****

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