税理士と不動産のプロ達による不動産相続のヒソヒソ話

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2017.10.11.Wed

カテゴリー:インタビュー自分の土地について知っておくべき3つのこと ~不動産オーナーにとって不動産鑑定士活用法とは~についてFCS不動産鑑定さんに聞いてきた!

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-こんにちわ。「あなたの代わりに不動産のプロに話を聞いてきました!」の栄えある第1回目のインタビューのゲストは、FCS不動産鑑定株式会社の代表で不動産鑑定士の米倉誠人先生です。先生よろしくお願いいたします。

 

    米倉:よろしくお願いします。

 

    -僕と先生の出会いは遡れば随分古いですね。僕が独立開業前に勤めていた税理士法人に先生が営業に来られたのがきっかけだったかと思います。当時は不動産鑑定士の先生がこんな営業するのかと驚いたのを覚えています(笑)最近では、先生が主宰されておられた不動産に関する勉強会で色々なことを学ばせていただきました。

 

    本日のテーマですが、「自分の土地について知っておくべき3つのこと~不動産オーナーにとって不動産鑑定士活用法とは~」と題して、不動産オーナーがどのような場面で、どのように不動産鑑定士の先生を活用することができるのかといったことを中心に伺いたいと思います。     不動産鑑定士というと文字通り不動産に関するお仕事をされておられるにも関わらず、実は不動産オーナーにとって身近な存在ではないのではないかなと感じられます。

 

 

 

「相続税評価額と時価」

 

 

  不動産鑑定士と不動産オーナー及び我々税理士との接点っていうと、やっぱり財産評価のところの「財産評価基本通達第6条」(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。)の規定を適用できるような案件が頭に浮かびます。

 

    具体的には、財産評価基本通達に則って評価をしたらこれはどう考えても時価より相当高いよねっていうような土地が出てきた時に、不動産鑑定士の先生にその土地の鑑定評価をお願いして、その鑑定評価額をもって申告するというようなケースかなと思うんですけどいかがですか?

 

    米倉:そうですね。ただ、分量的には財産評価基本通達に則った評価額(以下、「通達評価額」)が時価より高いよねっていうのを税理士さんが気づいて鑑定してよって依頼が来るのは、僕らの税務に関わる仕事の中では少ない。

 

    -少ない?それは、我々税理士サイドがその土地の時価を把握してないからでしょうか?

 

    米倉:時価を把握してないからということもありますし、基本的には土地の相続税評価って財産評価基本通達の則ってやればとりあえず答えは出るじゃないですか。

 

    - はい。

 

    米倉:あれ(注:通達評価額)って、時価よりちょっと低く設定されてるので、ほとんどの物件がそれでOKなんですよ。大体の物件はそれで評価できちゃうので、すごくよく出来た仕組みなんですね。     だけど、何割ぐらいあるか数字はわからないですけど、ごく少量通達評価額が時価より高くでる。その割合が多分非常に少ないんですね。なので、そもそもそういうことによほど意識をしていないといざそういう物件に出くわしても、深く検討しようということにならない。

 

    -例えば、無道路地なんかは通達評価額が時価よりも高くでる代表格的なものとして言われてるじゃないですか。     広大地に比べても減額の割合が少ないので、無道路地って接道義務満たして無くて基本的には家も建てれないから実勢価格的にはほとんど値段がつかないけども、評価の減額幅に下限があって、それなりの通達評価額が出て時価と大きく乖離してしまう。

 

    米倉:そうですね。無道路地もそうです。ただ、僕の感覚としては、一番の財産評価基本通達の弱点は「規模の感覚」が抜け落ちているということです。土地のすべてが単価×面積で計算するもんだから、そこに総額感っていうのが影響しないんですよ。広大地補正が唯一それをカバーしてくれるものですが。  

 

 

 

「大きな土地と鑑定評価」

 

 

  -それは、土地が大きすぎることに関しての減額補正がかからないっていうことですね?

 

    米倉:そうそうそう。不動産マーケットは、必ずそのエリアによる総額のリミットみたいなのがあって、ほとんどのエリアでは総額による頭打ちがあるんですよ。     大阪市内のすごいマンションが建つとかビルが建つっていうところは、その総額が増えたことによってプレーヤーが減って減額になるっていうよりは、希少やから、競合してより単価が跳ね上がるっていうことが起こり得るんですけど、それは全国的に見てもものすごく限られたエリアの話なんです。     現実の不動産マーケットでは、例えばちょっと郊外にいくと1億の物件って売れないよねって絶対になる。だけど、財産評価基本通達では、面積が大きければどんどん掛け算して評価があがる仕組みになっているので、一番の弱点はそこですよね。

 

    -それに関していうと、先ほども話に上がりましたが広大地補正が唯一その弱点をカバーしていますね。しかし、その広大地補正の要件を満たさないけれどもとても地積の大きな土地で不動産鑑定士の先生に評価を依頼してその鑑定評価額で税務署を通すことが出来るんですか?

 

    米倉:すごく有効です。わかりやすい例で言うと、調整区域の山を何千平米、もしくは何万平米って持っていられる方がいて、固定資産税評価額×倍率(注:財産評価基本通達に則った評価)をしたら何千万円、何億円になりますよね。でも、売ろうとしたら0円でも買ってもらえないって言う土地は、やっぱり億単位の評価額がついて課税されたらかわいそうじゃないですか。それは僕ら不動産鑑定士の評価がすごく活きる場面です。 そこを不動産オーナーや顧問の税理士の先生が気づくかどうかですが。

 

    -なんとなく調整区域に関してはそういうことがあり得るんかな、まぁあり得てしかるべきかなと思うんですけど、それ以外の調整区域外や非線引の地域でもあり得ますか?

 

    米倉:全然あり得ますね。広大地がそれじゃないですか。広大地補正の適用要件を満たすとその評価を路線価の半分にしていいよっていうふうにやってるじゃないですか。今度変わりますけど(注:平成29年度税制改正により、平成30年1月1日以後の相続、贈与によって取得する土地に関して財産評価する際にはその取扱いが大きく変わることが決まっている)。それって結局規模による減額をみましょうっていうのがこの補正の主旨ですよね。それが使えそうだけど使えない物件、例えば地積はとても大きいけど羊羹切りって言って、開発道路付けずに開発できるような土地には広大地補正は使えない。

 

    -広大地補正の適用要件満たさないですよね。

 

    米倉:でも、絶対時価は低いんです。それって気付ける?っていう話になるんです。僕らがやってるのは、中に税理士さんが「これ時価の方が低いよね。だからチェックしてよ」って言ってくれる場合ももちろんあるんですけど、多いのは広大地のチェック、無料の診断の依頼を受けます。そこで、広大地補正の適用の可否のチェックをするとともに、広大地補正は使えないけど時価は下がりますよっていうのもチェックもするんですよ、実は。そして診断の結果、時価が通達評価額よりも低いと分かれば、鑑定評価でいきましょうかっていう提案をします。なので、そういう入り口で広大地補正の適用のない土地について鑑定評価で申告っていうのは結構お手伝いしてますね。

 

    -話それますけど、そういうケースに関しては、当初申告からその鑑定評価を使う?

 

    米倉:これも諸説あるんですけど、僕がこうやなと思っている説は、広大地に関しては当初申告でいくか、ちょっとリスクが高かったら更正の請求で行くか、リスクの度合いで提案を変えますね。ただ、鑑定評価については、全部当初申告でいきましょうっていうふうに言っています。その理由は、更正の請求って間違っているから更正じゃないですか。で、鑑定評価で申告って財産評価基本通達で申告してしまうとそれが地価を下回っていても、地価のほうが下回っていても最初のほうが間違いではないじゃないですか。なので、それって更正になるの?っていったらならない。

 

    -そうですね。明確に広大地補正を適用して申告の場合と通達評価に変えて鑑定評価を用いて申告する場合の違いを理解しておく必要がありますね。

 

    米倉:そうです。一旦通達評価額で申告してしまうと、仮にそれが時価を上回っていても間違いではないじゃないですか。なので、それって更正になるの?っていったらならないっていうことです。

 

    -更正の請求の要件には合致しないですよね。

 

    米倉:はい。という言う説が有力なので、(注:鑑定評価で)いくなら最初からいきましょうっていう言い方をしていますね。

 

    -翻って、広大地補正に関しては、当初申告では補正を適用してなかったのを実は適用出来ましたねっていうのは、更正の請求要件に合致するというお立場なんですよね?

 

    米倉:そうそう。今まではそうやって通達評価よりも時価が低い土地を見つけることができたんですよ。広大地補正の適用の可否を心配して、税理士の先生ないし不動産オーナーさんがうちに診断に来ていただいていたんで。去年なんかは年間500件とかきましたね。

 

    -すごい数ですね。

 

    米倉:その中から、いやこれ広大地補正は使えないけど、時価(注:時価=鑑定評価)行けますよっていう話をしていたんですけど、今後は(注:税制改正により)広大地の心配がなくなったんで、そういう案件が不動産鑑定士に持ち込まれない可能性がある。なので、僕がいま皆さんに言ってるのは「きちんと時価で申告できないかどうかのチェックしてくださいよ」ってことですね。

 

    -チェックしてほしいっていうのは、今後も変わらず不動産鑑定士に依頼して欲しいっていうことですか?

 

    米倉:依頼して欲しい。まぁ僕らの会社的にも依頼して欲しいですし、税理士さんにしたらそのお客さんのためにって思っているんだったら。

 

    -単に通達評価して終わりでなくてそこまでやるべきだよねっていうことですね。

 

    米倉:一手間ですけど、路線価評価(注:=通達評価)出ました。出ましたけど時価下がらんかっていうチェックをもう一手間。

 

    -その時価下がらんかなっていうチェックは具体的に言うと、税理士としてはどんなことが出来るんでしょうか?不動産鑑定士の先生に依頼する以外にやりようってあるんですか?

 

    米倉:(注:税理士が)自分でするって意味でですか?自分でするには、不動産業者にヒアリングすれば大体の答えは出ますよね。でも、それよりは僕らに渡すほうが早いですよ。多分。

 

    -ですね。そりゃそうですよね。

 

    米倉:そうですし、相続税の財産評価を鑑定評価で申告するってあんまりやっている人が少ないので、それなりの特有のやり方、ノウハウってあるんですよ。例えば言ったら、収益還元(注:不動産の鑑定評価に用いられる3つの評価方法の1つである「収益還元法」のこと。その他「原価法」と「取引事例比較法」がある)を国税は好まないので、収益還元が低いから時価が低いよっていう論法は通じないんです。そのロジックで行くのは良くないので、別のやり方で規模の補正はやっぱり通用すると思うので、そこを見つけるのが僕らの作業ですよね。  

 

 

 

「財産評価基本通達第6条の解釈」

 

 

  -その不動産鑑定士の先生にお願いするとしたらどんな不動産鑑定士の先生にお願いすればいいのかっていう話については後ほどお伺いすることにして、話を戻して、この財産評価通達の6条に関して、相続税について取り組み始めたての税理士や素人である不動産オーナー自身がこの通達を読んだら、この「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」って、課税局側が適用できる規定であって、税理士サイドは使うことが出来ない。とか、あるいは鑑定評価でいくなら事前に国税庁長官の承認を受けないといけないっていうふうに読んでしまいがちじゃないですか?

 

    米倉:そう読めちゃいますね。

 

    -僕も最初読んだ時はそういうふうに思ったんで、あんまり6条の規定って引っかかってなかったんですけど、実際には税理士サイドも適用することができるという解釈でいいんやみたいなことは実務をやるうちに知るようになりました。それは先生の理解あるいは実績としても、間違いなく納税者サイドも場合によっては鑑定評価を用いての申告っていうのは認められているということでよろしいんですよね?

 

    米倉:はい。不服審判所の裁決の事例なんかもチェックしていて、鑑定評価が是認も否認もどっちもされていますけど、それが否認されるかOKになるかの線引は「特別な事情」があるかどうかを国税不服審判所が判断しているんですよ。いっつも。その「特別な事情」ってなんだっていったら、結局通達評価の数字と時価との間に著しい乖離があるかどうかなんですよ。

 

    -ものすごくざっくりいうと、「著しい乖離」っていうのは感覚的にどれくらいなんですか?

 

    米倉:はっきりわかんないですけど。僕らは一応2割ぐらいを目安としていますね。

 

    -2割?2割ぐらいでも著しい乖離があると言える?

 

    米倉:何パーセントかは、はっきりしてないですね。はっきりしてないですけど、お客さんに提案する時に、(注:通達評価額に対して)10何パーセント鑑定評価は下がりますというような場合には、これくらいならやめときましょうっていう話し方をしますね。

 

      -その20パーセント以上の乖離があるかどうかというような目利きもあんまり申告実務になれてない税理士は出来ないと思うんですけど、次の質問にも関わりますけど、一般的に言って先に話が出た無道路地や地積の大きな土地以外に6条の規定を用いることが出来そうな物件って言うとどんな物件がありますか?     たとえば、僕らがセミナーとか勉強会とかで話を聞いていると、奥行価格補正にしても、その他のいろんな補正にしても定められた補正率表の中で減額幅に下限があるじゃないですか。もう100メートル以上は一律0.8とかって。実は、奥行が100メートルの土地と150メートルの土地が同じ減額幅でいいのかみたいな論点もありますよね。そこっていうのは、実際不動産の売買実務で言うと当然加味されるでしょうから、通達評価と時価が乖離するポイントなのかなっていう気はするんですけど。

 

    米倉:そうですね。それもありますね。だけど、僕が思うのは、今の話って補正率の話じゃないですか。補正率が財産評価基本通達だとマイナス30パーセントだけど、本来はマイナス50パーセントでしょっていうのって、いったらもう主観でしかない部分があって、あんまりロジカルじゃないんですよ、そこの議論って。あまりしたくないんですよ。どちらかというと、そもそもこの場所って路線価があって、路線価で売れてないよねっていうエリアのほうが話を展開させやすいですね。本当にカバーすべきは、田舎の大きな土地なんですよ。まさに広大地のような物件のほうが時価と路線価が乖離するんだと思いますね。田舎で面積が大きい。

 

    -なるほど。田舎っていっても調整区域ほどではない?

 

    米倉:もう全然。戸建てが建つようなところですね。普通に田舎っていっても大阪とか阪神間でもちょっと駅から遠かったりするところってエリアによって全然路線価で売れませんみたいなところもありますからね。(注:地積が)大きくなったら時価下がるよっていうそっちのほうがいいかなと思いますね。

 

    ― さっきのその20パーセントぐらいの乖離でやっと著しい乖離と見るという話ありましたけど、そもそも相続税評価っておよそ時価の8掛けになるように路線価が設定されていますよね?

 

    米倉:そうそうそう。

 

    ― ある意味20パーセントのバッファーを持たせてるじゃないですか。

 

    米倉:そうですね。

 

    ― その20パーセントっていうのは、その中で(注:多少の時価と通達評価額の乖離は)吸収されるべきやっていう考え方でもあるわけですよね?

 

    米倉:そうですね。基本は、時価の方が2割高いのが多いですね。実際には、大阪市内とかやったら時価が路線価の倍とか2.5倍とかしてますけど。もうちょっと離れた多くのエリアは路線価かと同等かちょっと上ぐらいで時価が形成されていて、そこで減額補正率が30パーセントじゃなくて50パーセントでしょっていう議論をしても、そもそも時価より(注:通達評価額を)2割低くしている以上って言う部分があるんですよ。結局は、財産評価基本通達ってようできてるなって言うような感じに僕は思ってしまう。ただ、規模に関しては財産評価はカバーしてないので、それは絶対やったほうがいいと思います。今度広大地の補正が、改正によって分かりやすくなるんですけど基本的に補正率は弱まりますよね。そうすると。。

 

    ―もっと時価と(注:通達評価額との)乖離ができるということですね?

 

    米倉:乖離しますよね。大きい土地は。新たな規模格差補正を適用した物件に関しては、「いや、これこの値段でいい?」っていうふうに思ってほしいですよね。だって、広大地の補正(注:を適用できたこれまでと比較して)から2、3割上がるわけですよ、通達評価は。

 

    -これまで広大地補正を適用できる物件で広大地補正を適用しても、まだ時価と(注:通達評価額に)乖離がある物件があったってことですか?

 

    米倉:広大地補正が適用できたら大体カバーできてます(注:通達評価と時価が近づいている)。それより下がるっていうのは超特殊な例で、今計算すると路線価の半分ぐらいになるじゃないですか。それより時価のほうが下がるっていうのはかなりレアケースです。なので広大地が使えたらそれでOKって僕は思いますけど、改正後の新しい補正では路線価の8掛けになりますと。それって多分(注:減額の補正が)足りてない物件がたくさんあると思います。

 

    ―これまでの広大地補正の問題点っていうのは形状のきれいな広大地の評価がむしろ下がりすぎてたということですよね?

 

    米倉:そうそうそう。それはありますね。

 

    ―って課税庁側は考えているわけですね?

 

    米倉:そうですね。そうですね。

 

    ―だから、形状の悪い広大地に関してはその他の補正をした後に規模格差補正を考えるんで、これまでとロジックは違うけど同じような評価額になる可能性はあるわけですよね?

 

    米倉:いや、物件によりますけど、それでも(注:評価減が)弱いと思います。

 

    ―それでも弱い?

 

    米倉:弱いと思いますけどね。また時価の話になるんですけど、今不動産マーケットが良いので、人気のあるエリアは路線価の2割増しじゃないんですよね、時価が。路線価の1.5倍とか2倍とかしてるわけですよ。東京圏とか特に。  

 

 

 

「路線価の実態」

 

 

  ―今すごく人気があるエリアでは、その路線価の評価が要は時価の上昇に追いついていない?低すぎるわけですよね?路線価が。一応路線価の見直しって毎年やってるんで時点修正みたいなものをかけてるじゃないですか。そんなのでは全然カバーできてない?けれども、それも不動産鑑定士の先生がやってはるんですよね?路線価の基になる評価って(笑)    

 

 米倉:そうですね。路線価の基になる標準宅地の評価は不動産鑑定士がやってます。でも、マーケットの上がり下がりをそのまま追っかけないっていう特性があるんです。なぜか(笑)     その理由としては、例えば、今大阪市内のマンションとかビルになるような商業地はリーマンショックの後ばーって値段が上がりましたね。で、今は時価が路線価の倍のところにあるってみんなわかってるわけですよ。路線価で買えると誰も思ってないんですよ。じゃあ、路線価もっと上げろよっていう話なんですけど、それをじゃあ時価の上昇に合わせて年間30パーセントとかって上げていってしまうと、その土地を売るつもりがないとか代々所有している人からすると持っているだけで固定資産税が3割上がってしまうとか、たまたまその時に相続が発生すると評価がその前年に発生した場合より30パーセントも高いっていったらきついですよね。なので、トレンドには合わせるけども、全く時価をピッタリ追いかけることはしない。公的な評価、固定資産税路線価も相続税路線価も地価公示も追いかけるのはゆっくりねっていうのが特性なんです。

 

    ―ずばりその時点での取引売買実例やら最有効利用みたいなことは考えてないんですね?

 

    米倉:そうですね。そうですねって言ったらあかんか(笑)。本来は考えている建付けなんですけど、真剣にそれをじゃあ路線価の倍で売れてるから倍にしようっていうことをしてしまうと持っているだけの地主さんがかわいそうすぎるよねってことなんだと思います。     でも実際そうです。それで大阪では今時価が路線価の倍です。銀座は3倍です。誰もそんな土地を路線価で買えるとは思ってないですよね。

 

    ―今の話で言うと、逆に現実にはそんな起こり得ないかもしれないですけど、急激に時価が下がったとしてもその下落のペースっていうのはゆっくりになるんですよね?すぐには加味されないんですよね?

 

    米倉:ゆっくりですね。

 

    ―っていうことは、そこにまた時価と路線価評価、いわゆる通達評価額に乖離ができて、時価評価を申告に用いた方がいいケースっていうのが起こり得るんでしょうか?

 

    米倉:起こり得ると思いますね。まぁ(注:時価の下落ペースと路線価の下落ペース)全く一緒ではきっとないですよ。  

 

 

 

「時価=鑑定評価が相続税の申告に使えるケース」

 

 

  ―なるほど。またちょっと6条規定が適用できるケースの話に戻るんですけど、僕ら固定資産税の見直しでやってるんですが、固定資産税のほうでは総務省が定めている固定資産税評価基準で決まっている補正って相続税に倣ったメジャーなものしかないんですけど、それぞれの市町村が独自に「所要の補正」っていうのを設けてるじゃないですか。

 

    米倉:そうですね。

 

    ―「所要の補正」って本当に色々なものがあるんですけど、例えば、歩道橋の橋げたがその評価対象地の目の前に来てるから減額補正してあげようとか、鉄道の線路沿いの減額、水路に面している減額、隣が墓地だから減額とかね。そういうニッチでマニアックなものありますよね。実際その不動産を売買する時には、そういうことも価格に反映されてと思うんですけど、そういうのはこの6条の規定使って時価評価を出してっていうのは馴染みそうですか?

 

    米倉:うーん、難しい。完全に僕の考えなんですけど、今仰ることってのは個別的要因なんですよ。標準的な宅地に比べてここが悪いから減額しますよって。無道路地にしても奥行にしても歩道橋にしても全部個別的要因なんですよ。それが好きな不動産鑑定士もいるかもしれないですけど、「歩道橋があるから何割減すべき!」って。だから時価のほうが下がるよねっていうことをする鑑定士もいるかもしれないですけど、僕はあんまそこで議論はしたくないと思っています。

 

    ―それは対税務署に対する仕事だからそういうことはしないのか、実際にその不動産売買のための鑑定評価額を出してくれっていう依頼があってもそういうことはあまり加味しないっていうことなんですか?

 

    米倉:加味はしますよ。たとえば奥行が長い、加味しますよ。無道路もちろん加味しますよ。でも、その減額率が、財産評価基本通達が決めている率より何パーセントか大きいでしょっていうのって根拠がないんですよね。そうすると、そこで争ってももう向こうがダメって言い出したら平行線な議論にしかならないんですよね。僕が思うのは、やっぱり大きい土地は売れないよっていうきちんとした取引のデータがあって、そこで争いたいと。争いたいというとおかしいか(笑)そういう物件は、救済したい、ちゃんと時価を出したいって思います。

 

    ―ある程度実証できて論理的に話ができるような項目かどうかっていう違いなんでしょうか?

 

    米倉:だと思いますね。ただ、無道路地に関しては、理屈は立てれるんでね。ここの用地を買収したらどうでとかっていうことは出来るんで、無道路に関しては出来るとは思うんですけど、奥行補正の率がもうちょい大きいでしょとか横に墓地があることがどうでしょっていうことってもう絶対答えのない話なんで。それは言ってもしょうがないなっていうのは、僕は思います。

 

    ―なるほど。でも、そういうのやる鑑定士の先生もいるんですよね?それは鑑定士の先生の範疇なんですかね?そこまでも。

 

    米倉:うーん…なんかね、例えばね、(注:評価対象地の)横に組事務所がありますってときに、それで減価何割ってしますっていう不動産鑑定士もいるんですよ。

 

    ―そんな減額通るんですか?(笑)  

 

  米倉:うん。すごいこれで下げたよっていう人も中にはいるんですけど、それはただ否認されなかっただけやろって、僕は思っていて。

 

    ―税務署が認めたわけではなくてね(笑)  

 

  米倉:はい。それなんか理由ある?って思いますもんね。その30パーセントの減価あるいは半分の減価に理由ある?って僕は思いますけど、まあそういうのもやるっていう人もいると思いますけど。

 

    ―それこそ、その墓地とか公衆トイレとかそういう嫌悪施設とか危険施設とかあると評価を、下げるべきやっていう人もいるじゃないですか。でも確かにそれでいくら下がるねんっていうのは論理的には言いにくいですよね。

 

    米倉:言いにくいですね。なんで僕はあんまりそれで下がりますっていうのはなかなかよういわんなっていうのはあります。

 

    ―ただ、騒音とか振動とか日照被害によってその利用価値が付近にあるほかの土地の利用状況から見て著しく利用価値が低下しているような場合には10%評価を落とせるよっていう国税庁のタックスアンサーか何かにあるじゃないですか。あんなのも税理士ではなかなか判断が付かないと思うのですが、やっぱり不動産鑑定士の先生に相談しながらやってるんでしょうか?

 

    米倉:いやあ、どうですかね…。わからない。でも、それも僕の感覚では2割(注:時価と路線価のバッファー)の幅の範囲の話なんですよ。

 

    ―そういう項目での評価減って確かに2割で収まりそうですよね。大体ね。

 

    米倉:そうです。しかも、最終的に騒音は路線価に織り込んでますって言われたら終わりなんですよ(笑)僕の感覚からすると、そのタックスアンサーや財産評価基本通達の理解の範疇で税理士の先生が戦うのは僕はありやと思いますけどね。でも、そこで不動産鑑定士に別でフィー払って、じゃあ10パーセント下がるよってやったところで、合うかって言ったら合わないじゃないですか。

 

    ―合わない。

 

    米倉:合わないでしょ(笑)騒音だなんだってのは、不動産オーナー自身や税理士先生が見つけて戦うのはありやとは思いますけどね(笑)

 

    ―なかなかそこまで細かな論点では、 20パーセント以上下への乖離っていうのは望めないってことですよね?

 

    米倉:望めないんじゃないかと僕は思っているということです。

 

    ―とはいえ、そういう相談もされることはあるんですか?(笑)  

 

 米倉:されますね(笑)

 

    ―そんな場合でも、一応見ていただけるんですか?(笑)

 

    米倉:見ます見ます。僕は下がらないと思うけどこれ下げるっていう人もいるかもしれませんって言いますかね。

 

    ―なるほど。よくわかりました。

 

    米倉:繰り返しになりますが、僕のポイントは「エリア」と「規模」です。

 

    ―エリアと規模。

 

    米倉:エリアが都心部だとか規模がすごく大きいとかって、通達評価では反映しきれない仕組みになってるっていうのが僕は思うところです。

 

    ―そういうエリアや規模の物件を見つけたら、時価と通達評価の乖離が大きくて、納税者サイドもフィーを払ってでも鑑定評価をやる価値があるような物件になってくるんですよね。

 

    米倉:そうです。  

 

 

 

「相続税評価額と時価の乖離が節税のポイント」

 

 

  ―なるほど。そういう乖離があるもの、今仰られたような規模とかエリアとかっていうことが見えてくると、逆に生前にこういう物件を買っといたら時価と通達評価額の乖離が大きくて相続税の節税になるよってことができますよね?

 

    米倉:そうですそうです。まさにそうで、今の話って結局軸が相続税路線価より下がらないかっていう軸じゃないですか。で、相続税対策って相続税評価よりも高いものを買っておきましょうっていう話じゃないですか。

 

    ―逆にですね。

 

    米倉:それは、同じ目線で時価と路線価評価を並べてもらって、税理士先生や不動産オーナー自身に感覚を持ってもらうっていうのがすごい大事だなと思っていて。何回も大阪市内は土地の時価が路線価の倍ですよねって話をしていますけど、結局現金で1億円の土地を買って、路線価が5千万円やったら、もう駐車場で回しただけで5千万円の相続税対策になってるわけですよね。そういう土地っていっぱいあると思いますよね。

 

    ―なるほど。そういう物件の見つけ方っていうのは、大阪の土地だったらどこでもいいっていうような話なのかもしれないですけど、何か特徴があったりするんですか?     例えば京都とかやったら、ウナギの寝床って言われるような奥に長い土地が多くて、奥行価格補正が結構掛かるんで評価額が下がるけど、安定して人気のエリアやから時価はそれなりに高くて、時価と通達評価額の乖離が大きいみたいなことを言う人もいるじゃないですか?

 

    米倉:あると思います。

 

    ―不動産投資としては京都の物件いいよみたいな。そういうこともありえる?

 

    米倉:ありえるんじゃないですかね。ありえますけど、それもなんかすごいテクニカルな気がして(笑)そんなことより、そもそも京都が人気があることのほうが大事なんですよ。

 

    ―なるほど。(笑)  

 

 米倉:いろんなところから買いに来ますからね。

 

    ―でも、その京都の安定した人気っていうのは、それこそ路線価に反映されてないんですか?(笑)

 

    米倉:路線価にね(笑)

 

    ―反映されていたら乖離は埋まるわけじゃないですか(笑)。人気とはいえ。

 

    米倉:本来もっと(注:反映)されるべきですけどね。

 

    ―実際は反映しきれていないという感覚なんですかね?

 

    米倉:そうですね。だと思います。東京も大阪も京都もそうですよね。

 

    ―ざっくりその東京、大阪って仰られるのは、東京やったら23区っていうイメージですか?もっと広く八王子や町田まで含めた東京と考えてもそういうことは当てはまります?

 

    米倉:やっぱり23区。それが山手線の中になればもっと人気が集中するし、都心3区、千代田区、港区、中央区とかやったらもっと人気上がります。

 

    ―その辺りが特に人気で、特に路線価にその時価の反映が追いついてないので逆に生前対策になるっていうことなんですよね?ずっと人気が下がらないという前提ですが。

 

    米倉:と思いますね。でも、実際地価が上がるところってものすごく限られているんですよ。日本って人口減ってますよね。で、地価が上がった上がったって言ってるんですけど、日本で地価が上がっているところなんて本当に人口が増えているところだけなので、すごく少ないんですよね。今言ったところは全部リーマンショック後需要が集まって土地値が上がったところなんですよね。他のところは上がってないんですよ。

 

    ―東京、大阪、京都?

 

    米倉:あとは名古屋、福岡。

 

    ―くらいですか?

 

    米倉:そのエリアの中心地ですよね。それくらいしか上がってないんですよ。

 

    ―僕は最近路線価がタイムリーに時価を反映しているなって感じたことがあったんですけどね、大阪のミナミの心斎橋筋商店街の近くの土地の評価をすることがあって、商店街から何本か東にいった東心斎橋の土地ですが、そことその商店街のアーケードの通りを比べると商店街は800万円、3本ズレたら60万円みたいなことになってて。

 

    米倉:ああ(笑)はいはい。

 

    ―いや、心斎橋商店街って外国人旅行客の爆買いもあって人気や人気やとは聞いてたけど、1本2本道ずれるだけでこんな路線価違うんかと思って。

 

    米倉:ほんまですね。

 

    ―それみて、路線価って地価をこうも急速に反映するのかなとか思ったんですけどね。

 

    米倉:でも、路線価60万円でも坪200万弱でしょ?それは、まだ地価の上昇反映してないと一緒ですもんね。

 

    ―あ、そういうことですか。実際は、もっと高いってことですよね? なるほど。そういうことですね。ちょっとスッキリしました。

 

    米倉:そういうエリアに土地を持っているっていうことは、相続税の路線価は平米60万円でしょ、おそらく買値、売値は倍以上しますから。それだけの節税対策になっているということなんでしょうね。

 

    ―なるほど。実際には、そこはその土地の有効活用についていろいろなこと検討しているんですが、こと相続税の対策に関してだけでいうと、売っちゃうのはもったいないっていうことですよね?

 

    米倉:もったいない。税理士さんが相続税対策を考える時に、資産の棚卸しをするじゃないですか。その時に納税資金いくらかかるから、どれを売ろうかって思う時に、相続税っていう軸と時価っていう軸を両方持ってもらって考えないとダメですよね。     今の物件なんかは、相続を迎える前に売っちゃダメなんですよ。別に売れる物件があるんであれば、通達評価と時価が近いものを先に売っとくべきですよね。

 

    ―地主さん一家の相続で土地はあるけどキャッシュがなくてみたいなケースで、納税資金が心配やったらそういう土地を持ったまま死んでもらって、実際に申告・納税するまでに売ればいいですよね?変な話ですが(笑)まぁ売った時の税金もありますけど。

 

    米倉:そうですね。ただ、相続税の申告の期間が10ヶ月じゃないですか。不動産の売却に要する期間って通常半年~10ヶ月ぐらいなんで、もしその間に売ろうと思っていられるんであれば、先にその土地の境界確定をしとくとか、資料を精査しておくとか仲介業者に話を振っとくとか準備をしておくっていうことが重要になりますね。

 

    ―そうですよね。いまちょうど、境界確定を土地家屋調査士の先生にお願いしている案件があるんですが、すごくややこしい物件で、半年ぐらい法務局行ってもらったり役所行ってもらったりで全然進展がなくてこんな時間かかることあるんねんなと思って、これが相続発生後の案件やったら大変でした(笑)

 

    米倉:そうですね。まぁでも境界確定をしないまま売ることも出来るじゃないですか。

 

    ―もちろんそうですね。

 

    米倉:しないまま売ることも出来ますけど、どっちみち売るんだったら境界確定した後に売るほうがいいですもんね。

 

    ―そう。いずれやるんならだから被相続人の負担でやっておいてもらうほうが、相続してから相続人の負担でするよりそれはそれで相続税の節税対策にもなりますしね。

 

    米倉:いいと思いますよ。それから、相続で土地を売る時って買い叩かれるイメージがあるでしょ?それは、時間がないからなんですよね。なので時間を作れるように準備しておくっていうのはすごい大事。     東心斎橋に関しては、準備ができていればすぐ売れるんで問題はないです。これがたとえば姫路市で持っていますといったら、準備をしていてもなかなか売れないんで。これはゆっくり時間をかけて先に売っておきましょうっていう物件ですよね。

 

    つまり、相続税の評価、時価を知っておくのが大事なのと同様で、換金のスピードってやっぱりエリアによって違ってくるので、そこも把握しておく必要があるんですよ。これは相続発生後に売ってもいいよっていう物件と、これは時間短かったら叩かれるから先売っとこうっていうのと。そのへんはやっぱり目利きがいるなと思います。

 

    ―要りますよね。でも税理士の立場としては、どうしても普段から法人でお付き合いのあるお客さんだと相続が発生したらそういう準備ができていることが多いんですけど、相続が発生してから依頼を受けるケースっていうのがやっぱり相続の申告業務の中で過半なんです。そうなるとなかなかそこが手付かずのままになってしまってるんですよね。それで申告期限の10か月にあたふたする。

 

    米倉:それはしゃあないですね。

 

    ―ね。とはいえ、そこは何か本当の専門家がアドバイスできるような仕組みっていうのがあるといいですよね。

 

    米倉:なんかありそうですけどね。

 

 

 

「不動産鑑定士の使い方」

 

 

  ―なんか、そういうケースも含めてどういうことを不動産オーナーさんは不動産鑑定士の先生に相談すればいいんですかね?

 

    米倉:鑑定以外の部分ですか?

 

    ―そうですね。相続が発生して申告の際に鑑定評価をお願いしますっていう場合以外で。

 

    米倉:鑑定以外の部分で言うと今受けてるのが、収益不動産を何個か持っているっていう会社さんの資産の入れ替えをしたいという相談ですね。まず、その物件についてキャッシュフローを見直しましょうということをやります。で、どの不動産がどんだけの収支を生んでるのか、修繕等の投資をどの物件に投下したらいいんだろう、あるいはどの物件を処分しようかっていうことを一緒に考えましょうみたいなことをしていますね。    

 

 ―不動産オーナーであれば、法人個人問わずそういう相談に乗っていただけるんですか?

 

    米倉:そうですね。もっとシンプルに1物件の収支改善をしましょうっていうのも最近やり始めました。    

 

 ―収支改善?

 

 米倉:そう、物件の収支改善。不動産オーナー業の人って、別に本業があったりして、不動産に関しては、よく分からんから任せっきりやねんみたいな人って結構いるじゃないですか。     状況を確認したら、ビルのメンテナンス費用がむちゃくちゃ高いままになってるとか、保険料ももっと見直しできますよとか、大きな融資についても、借り換えをしたらすごく良くなりますよね、みたいことがいっぱいでてくるんです。物件ごとのキャッシュフローをそれぞれ管理も把握もされてない人が多いので、そこを僕らがしっかり物件ごとに把握できるようにしてあげる。そうすると、見直せる部分がたくさん見えてくるので、それを見直していきましょうっていう業務ですね。

 

    ―この「不動産鑑定士による賃貸マンションのVALUE UP」(注:米倉先生が始められる新規事業)のチラシに書かれているバリューアップ項目にあるレントロールの作成とか収入アップの検討とか、空室率の改善とか、普通は管理会社がやるべき項目なのかなと思いますけど。例えばアパート持っている不動産オーナーの人とかって、ほとんどの人は金払って管理会社雇ってるじゃないですか。

 

    米倉:管理会社をちゃんと雇っている人ばっかりじゃないですよ。僕らが鑑定をする時、不動産オーナーにレントロール出してくださいって言うんですよ。管理会社が入っている人からはレントロールすっと出てきますけど、入ってない人もいっぱいいて全然でてこなかったりするんですよ。出てきても、手書きのやつとかもかなり多いです(笑)

 

    ―管理会社を雇っていないってことは、管理はご自身でされているんですか?

 

    米倉:そう。そうすると、「その物件の空室率って何%なの?」とか、「去年の収入いくらだった?」ってこともわからない人がものすごい多いんです。

 

    ―それなんで管理会社頼まないんですかね?そういう人達は。コスト倒れすると思ってる?

 

    米倉:思ってるんじゃないですかね。

 

    ―でも、実際僕もクライアントの資産家の方の仕事してて、その人が雇ってる不動産管理会社に物件の1年間の収支やら明細を出してくれって言っても全然出てこなかったり、明細見てたら、ものすごい修繕費とられてたりってことがありましたね。

 

    米倉:ああ(笑)。

 

    ―自分のとこで工事まで出来るから、無茶苦茶してるような管理会社って結構ありますよね。

 

    米倉:あるんじゃないですかね。

 

    ―人の良い不動産オーナーがものすごく食い物にされてるなっていう印象があって。そういうところに頼むんやったら自分でやってる方がマシなんかもしれないですが、きちんとやってくれる管理会社とかってなかなか不動産オーナーの方が自分で見つけれないですよね。

 

    米倉:そうっすね。ちゃんとウォッチしてあげる役目もいるんかな。

 

    ―要りますよね。ところでこの(注:「不動産鑑定士による賃貸マンションのVALUE UP」)ビジネスはどうやってお客さん捕まえていくんですか?

 

    米倉:例えば、税理士さんのお客さんで「これ見直してよ」っていうお客さんってきっといるんじゃないかなって思うのでそういったところからの紹介ですね。

 

    ―これ見直しをした後、その物件の管理業務まで受託するんですか?

 

    米倉:管理は受託しないですね。年間のキャッシュフローを作って、改善できるところを改善して、出来た分のいくらかを報酬として頂戴ねみたいな仕事にしようかなと思っています。

 

    ―法人に対するコスト削減のコンサルティング会社って一時流行ってたくさんあったじゃないですか。それの不動産版っていうような感じですか?

 

    米倉:そうですね。僕自身分譲マンションに住んでて。築7年目の分譲マンション。43戸。今年管理組合の理事があたって、それこそマンションの管理費見たら高いんですよ。ちょっと高いと思うので見直しませんか?って言って見直したら、年間500万の管理会社に支払ってる費用が100万円減額になりましたからね。それで浮いたお金来年から修繕積立金に回しましょうねって言ったんですけど、めちゃくちゃいいじゃないですか。そいう改善って出来るよねって思ってます。

 

    ―なるほど。

 

    米倉:どこまで改善の余地かは物件によって違って、もう見直す点ないですっていう物件もあるかもしれないですけど、まあ一通り見れば分かるので見直しましょうってことです。

 

    ―ちなみに、フィーはどこからもらうんですか?

 

    米倉:不動産オーナーです。

 

    ―不動産オーナーからもらうんですね。実際に改善なんかをやってくれる提携業者からバックをもらうっていうのじゃなくて?

 

    米倉:それは、あんまり考えてないですね。それをしだすとなんかようわからん話になってきそうなんで(笑)

 

    ―なるほど。いやぁ、そういう見直しって潜在的にニーズはものすごいあると思いますね。

 

    米倉:面白いと思いますね。今の自分の住んでいるマンションについてもまだ見直せるぞと思ってて。まあ、1年で理事は辞めますけど(笑)     やっぱり、ずっと誰かお目付け役がいるんですよ。何もせずほっとったらね、修繕積立金が足りないので今年から上げますって平気でいいますからね(笑)おそらく。

 

    ―そうですね。本当のプロのお目付け役がいるのといないのとではもう大違いでしょうね。

 

    米倉:と思いますね。

 

    ―基本的には、営業は税理士事務所からですか?

 

    米倉:税理士事務所からですね。はい。不動産オーナー直接でも全然いいんですけどね。     僕、税務に関する鑑定評価をやりだして8年目ぐらいなんですね。そこで、人のつながりも出来たし、税務で使える鑑定評価についてだいぶ勉強したし、その失敗例と成功例も積んできたのので、経験値はものすごいあると思ってるんですね、自分のことを、自分の会社のことを。で、結局不動産と税務はすごい繋がってるぞっていうのが僕の中にはあってそこは連携すべきやって思っているんです。     地主さんから直で案件入ってきても、そっから顧問税理士さんとのつながりを作って、一緒にやりましょうねって話になってきますね。僕ら鑑定士にしても税理士さんにしても情報共有すればやりやすいなと思ってて。そうすると、仕事がスムーズでオーナーさんにとってもいいと思うんで。このやり方がまずはいいかなと。  

 

 

 

「不動産鑑定士の実態」

 

 

  ―そうですね。ただ、そもそもですが、不動産鑑定士の先生がどんな仕事をしはる人なのかっていうのは一般の不動産オーナーの方は全然ピンときてない人が多いと思うし、税理士でもそうなんじゃないかな。実は全然鑑定士と接点ないよっていう税理士も多いでしょうし、今おっしゃられたような経験がある不動産鑑定士の先生をどう探がしたらいいか分からない。不動産鑑定士の先生って皆さん開業するんですか?会計士のその監査法人、僕らの税理士法人みたいな大手のところに勤めている人のほうが多いんですか?

 

    米倉:開業している方が多いと思います。人数で言うと。ただ、傾向としては開業者自体は減っていっています。というのも、J-REITの存在が鑑定業界に与えるインパクトがすごく大きいんですよ。J-REITが出来て10何年なんですけど、その鑑定ニーズって毎年評価なんでものすごく多いんです。J-REIT自体も増えてるじゃないですか。ただJ-REITは金融庁の管轄で、大手の鑑定会社しか使うなっていう話になっているので、大手3社がすごい大きくなってますね。それでそこに残る人が増えてるって状況です。

 

    ―大手3社って言ったらどこなんですか?

 

    米倉:日本不動産研究所っていうところと、僕が前いた大和不動産(注:大和不動産鑑定株式会社)っていうとこと、大阪にある谷澤さん(注:谷澤総合鑑定所)。この3つが大きいです。

 

    ―その大手の名前すら僕らでも出てこないので、一般の人は全然知らないですよね。 しかし、そういうJ-REITとかの仕事が流れてこない個人レベルでやっている事務所とか中小レベルの鑑定士の先生のメインの仕事は何なんですか?

 

    米倉:何なんでしょうね?(笑)

 

    ―路線価?

 

    米倉:路線価とかもやってますね。

 

    ― 路線価評価を誰に頼むっていう時には、国は別にその事務所の規模っていうのは問わない?

 

    米倉:問わない。僕もやってますもんね、路線価。でも、普通それだけでは生きていけないから。公的な評価がベースにはなっていますが。うち(注:FCS不動産鑑定株式会社)は超マイノリティやと思います。

 

    ―そうですよね。税理士とタッグを組んでやっていこうっていう不動産鑑定士の先生もそんなに多くないですよね?

 

    米倉:そうですね。多分そうやと思います。そこに特化したというか、そこで動いたっていう鑑定士はあんまりいないかもしれない。税務と不動産関係っていうのも鑑定から見た場合は1つのマーケットなだけで、他にもありますもん。たまたま僕はそこに縁があって力を注いだと言うだけの話ですが。

 

    ― いやぁ、不動産は相続評価もそうですが、不動産業のクライアントって税務だけでも難しいし、売るなり買うなり、もっと有効活用しようていうとき、税務の観点からだけで考えてると間違うじゃないですか。当たり前ですけど。だから本当に難しい。

 

    米倉:そうですね。

 

    ―不動産を守るとか殖やすとか言ったとき、税務って本当に極々小さい1パーツでしかいので、色々なプロと連携したいですね。

 

    米倉:連携したいですね。不動産の世界って正解なんてあんまないんです。なんで、アイディアなんですよ。その人がわからない、気づかないことを気づくとかもそうですし。あとは、これだけは絶対やったらダメみたいなことを共有する。例えば、某建築メーカーの一括借上げのやつとか。

 

    ―そうですね。

 

    米倉:それはもう絶対間違い。そういうのを止めてあげるのも税理士さんであり、我々であるんちゃうかなと思いますよね。

 

    ―なんか不動産まわりのことをワンストップでいろんな視点から見てくれる業者があればいいんでしょうけど、なかなかないんでやっぱり税理士なり鑑定士なり不動産業者なりがタッグを組んでいろんな角度からみてくれて提案してくれるみたいなところにやっぱり頼めるといいですよね。オーナーさんからすると。

 

    米倉:そうですよね。そういうタッグでは税理士さんがすごい大きな役割を担ってると思いますよ。

 

    ―でも正直、不動産オーナー系の会社って税理士事務所はほったらかしにしがちなんですよ。 税理士の側にもっといろんな引き出しがあれば前向きな提案もできるんでしょうけど、しくじるとダメージが大きいだけに要らん事せんとこ、言わんとこになってるところがあるんでしょうね。

 

    仰られるように不動産オーナーの不動産を守っていく、殖やしていくためのチームの要はやっぱり税理士ですよね。不動産オーナーにとっては、いい税理士と付き合いをできるかどうかがものすごく重要ですね。     税理士としては、税務の知識を深めるのは当然として、不動産鑑定士やそのほかの専門家とのネットワーク作り、連携みたいなものを深めていくことが重要なんだと再認識できました。

 

    本日は貴重なお時間を長時間いただきまして有難うございました。  

 

 

 

[米倉’sMaxim]

 

・所有する物件の「相続税評価額」と「時価」と「売却に要する時間」を常に把握せよ!資産の入替も順序が大切!

 

・地積の大きな土地は、広大地の適用を検討するだけではダメ!鑑定評価を使えないか検討せよ!

 

・収益不動産のキャッシュフローを見直せ!バリューアップ、コストダウンの余地がたくさんあるはず!

 

・不動産オーナーは、専門家のなかでも本当のプロを探せ!本当のプロのチームがあなたを守ってくれる!

 

 

 

 

  【講師紹介】

 

FCS不動産鑑定株式会社

 

代表取締役 米倉誠人

 

所在地

◆大阪本社 大阪市淀川区宮原4丁目4−63新大阪千代田ビル別館3階

◆東京支社 東京都中央区銀座1丁目18−6井門銀座1丁目ビル3階

 

WEB http://fcs-rea.co.jp/  

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