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2018.09.07.Fri

カテゴリー:不動産の税金は××じゃ!「平成30年7月豪雨に大阪府北部地震、台風21号など大災害が続いていますが、被災事業者の方は税法等の特例についてご注意ください!」

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ここのところ悍ましい大災害が続いています。「平成30年6月の大阪府北部地震」、「平成30年7月豪雨」、そしてこの記事を書くきっかけになった「平成30年21号台風」、さらに原稿思案中に「平成30年北海道胆振東部地震」まで起こりました。僕自身も、大阪で地震と台風の被害にあったわけですが、もっと大変な被害者の皆様にお見舞い申し上げます。そして、これらの大災害の被害によって、とても決算や申告なんてしてられないよという事業者の方に情報をお届けしようと思った次第です。

 

 

 

災害等による申告等の期限の延長

 

 大きな災害に見舞われた事業者の方にとって、仮に申告期限が近かったとしても、申告なんかとてもじゃないけどやってられないよということになりますよね。

 

 そんな被災事業者の方のために、きちんと国税通則法期限の延長に関する制度が設けられています。

 

 

国税通則法第11条

  災害等による期限の延長

 

 

国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる

 

 ここにある通り、期限の延長が認められるのは、「申告」に限らず各種「申請」「請求」「届出」「納付」等となっています。

 

 そして、ここでいう政令とは次の国税通則法施行令の規定になります。

 

国税通則法施行令第3条

  災害等による期限の延長

 

 

国税庁長官は、都道府県の全部又は一部にわたり災害その他やむを得ない理由により、法第11条(災害等による期限の延長)に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、地域及び期日を指定して当該期限を延長するものとする。

 

2 国税庁長官は、災害その他やむを得ない理由により、法第11条に規定する期限までに同条に規定する行為をすべき者(前項の規定の適用がある者を除く。)であつて当該期限までに当該行為のうち特定の税目に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号。以下「情報通信技術利用法」という。)第3条第1項(電子情報処理組織による申請等)の規定により同項に規定する電子情報処理組織を使用して行う申告その他の特定の税目に係る特定の行為をすることができないと認める者(以下この項において「対象者」という。)が多数に上ると認める場合には、対象者の範囲及び期日を指定して当該期限を延長するものとする。

 

3 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、法第11条に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、前2項の規定の適用がある場合を除き、当該行為をすべき者の申請により期日を指定して当該期限を延長するものとする。

 

4 前項の申請は、法第11条に規定する理由がやんだ後相当の期間内に、その理由を記載した書面でしなければならない。

 

 

 条文を読んでもわかりにくいので簡単にまとめますと、期限の延長には次の3パターンが認められているということです。

 

 

地域指定による期限の延長

 →国税庁長官が、自然災害などの被害地域と期日を指定してその申告、納付等の期限を延長するもので官報に掲載される。

 

対象者指定による期限の延長

 →申告等に用いる国税庁が運用するシステムが申告、納付等の期限間際に使用不能である場合などに、国税庁長官がその対象者の範囲と期日を指定して、その申告、納付等の期限を延長するもので官報に記載される。

 

個別指定による期限の延長

 →災害等により期限までに申告、納付等ができないときに納税者がその納税地の所轄税務署長に申請することにより、(その理由のやんだ日から2か月以内に限り)申告、納付等の期限が延長される。

 

 

 

 そして、そもそもこの制度が適用される前提となる「災害その他やむを得ない理由」については、通達の方で次のように定められています。

 

 

国税通則法基本通達第11条関係 第1項

災害等による期限の延長

【法第11条】

 

1 災害その他やむを得ない理由

この条の「災害その他やむを得ない理由」とは、国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出、その他書類の提出、納付または徴収に関する行為(以下この条関係において「申告等」という。)の不能に直接因果関係を有するおおむね次に掲げる事実をいい、これらの事実に基因して資金不足を生じたため、納付ができない場合は含まない

 

(1) 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害

(2) 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通と絶その他の人為による異常な災害

(3) 申告等をする者の重傷病その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実

 

 

 

 見ていただいたら分かる通り、この数か月の地震豪雨台風(暴風)はもちろんすべてこの対象となります。

 

 ですので、これらの災害の被害にあわれた事業者の方で「とても申告や納付等をしていられないよ」という方は、期限の延長を税務署に申請してください。

 

 

 赤字ににあるように、これらの災害により資金不足を生じたために納付できないという場合は、この期限の延長を受ける要件を満たさないことには注意が必要です。

 

 ちなみに適用を受ける場合の手続きは、「災害による申告、納付等の期限の延長申請書」を1枚税務署に提出するだけの簡単なものです。

 

 

 

 

 個別に申請する個別指定でなく地域指定でいうと、例えば、「平成30年豪雨」であれば、平成30年7月19日(特別号外 第14号)版の官報にて「岡山県、広島県、山口県及び愛媛県の一部の地域における国税に関する申告期限等を延長する件」として指定された地域が示されています。

 

 また、地域指定により指定された期日にも申告、納付等できない場合のために、その後さらに個別指定を申請できるようになっています。

 

国税通則法基本通達第11条関係 第3項

3 地域指定と個別指定による延長との関係

 

通則令第3条第1項の規定により期限を延長(地域指定・筆者注)した場合において、その指定期日においても、なお申告等ができないと認められるときは、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2月を限度として、通則令第3条第2項の規定によりその期限を再延長することができるものとする。

 

 

特定非常災害の被災者のためのさらなる救済措置

 

 ここまで見た申告、納付等の期限の延長は大事な制度ですが、被災者である事業者にとっては、被災によって被るであろう損失は多岐にわたり、また金額的にも大きな負担を強いられる可能性があるため、この制度だけではとても救済されません。

 

 そんな被災者救済のため、平成29年4月に租税特別措置法の一部が改正されて設けられた救済措置のうち、よりインパクトの大きそうな消費税法の災害特例について説明したいと思います。

 

 まず、この災害特例の対象となる事業者ですが、「特定非常災害」の被災者である事業者とされています。

 

 この「特定非常災害」というのは、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」第2条第1項の規定により、特定非常災害として指定された非常災害をいう、とされています。

 

 

 

 

 これまで東日本大震災、平成28年熊本地震がこの特定非常災害として指定されており、このたび「平成30年7月豪雨」も加えられたようです。

 

 特定非常災害に指定されることにより、特定非常災害特別措置法に基づき、次のような措置が講じられます。

 

・運転免許のような許認可等の存続期間(有効期間)の延長

・事業報告書の提出などの法令上の義務を履行できない場合の免責期限の設定

・法人に係る破産手続き開始の決定の留保

・相続放棄等の熟慮期間の延長

・民事調停の申立手数料の免除

 

 

 そして、話を消費税の特例に戻しますが、「平成30年7月豪雨」などの特定非常災害の被災事業者については、具体的に次のような特例が適用されます。

 

 

 

特定非常災害の被災事業者のための消費税法の特例

 

 被災事業者が適用できる消費税法上の特例については、大きく次の2つに分類されます。

 

・消費税の課税事業者選択(あるいは選択不適用)の届出、簡易課税制度の選択(あるいは選択不適用)の届出について本来の提出期限を超えて認める特例

 

・被災事業者である新設法人等が基準期間のない各課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合や被災事業者が高額特定資産の仕入等を行った場合に、本来は制限を受ける事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用についてその制限が解除される特例

 

 

 実は、この辺の詳細については、熊本地震の被災事業者向けに出された「消費税法の特例に関するお知らせ」に非常によくまとまっているので該当しそうな方はぜひ読んでみてください。

 

 とはいえ、どんな方が対象になりそうかなかなか検討がつきにくいでしょうから、事例をあげて簡単にご紹介しておきます。

 

 2つの分類のうち、一つ目の分類の具体的な事例は次のようなものです。

 

 

 

 2つ目に分類される事例は少しマニアックになるのですが、簡単にいうと

 

 

  • 被災事業者が新設法人の場合、その基準期間がない各課税期間中に調整対象固定資産を取得したとしても(災害特例により)いわゆる3年縛りは発動しない
  • 被災事業者が被災日から指定日以後2年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の取得をした場合についても(災害特例により)いわゆる3年縛りは発動しない

 

 

 といった特例です。

 

 調整対象固定資産や高額特定資産の3年縛りについては、また回を改めてまとめておきたいと思います。(まとめました→「不動産の購入時に知っておきたい2つのキーワード『調整対象固定資産』と『高額特定資産』を理解する!」

 

 ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの消費税法の特例は非常に大きいですよ!

 

 災害により所有する資産が破壊されたうえ、代替資産の取得の際に消費税の仕入れ税額控除を受けられないとか、それにより向こう3年間も課税事業者を強制されるというのは、あまりに酷というもんです。

 

 被災事業者の方で、壊れた自社ビルや自社工場を再建築するといった方や、大きな設備投資を予定していたため課税事業者を選択していたけど、災害により設備投資計画を中止したというような方は、すぐにでも顧問の税理士の先生か税務署に相談してください。

 

 これらの消費税の特例については、特定非常災害の被災事業者に適用が限られているので、「平成30年6月の大阪府北部地震」、「平成30年21号台風」、「平成30年北海道胆振東部地震」の被災事業者の方には適用がないのですが、今後これらの災害についても特定非常災害として認定されないとも限りませんので情報にはご注意ください。

 

 認めるべきですよね、絶対。とんでもない被害ですもんね。

 

 

 

 実際、21号の台風により我が家の屋根も飛んでいきました・・・涙

 

 

 大した被害にあたらないですが、当人にしたらイタイもんですよ、やっぱり。

 

 

 完全に不可抗力ですからね。

 

 まぁ僕はいいんですが、被災事業者への救済措置の拡大はお願いしたいですね。

 

 

 また、ここでは紹介していませんが、消費税以外の特例ももちろんありますので適用漏れのないようにしてください。

 

 

 

 

*****

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