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平成30年7月6日に民法(相続法)の重要な改正がありました。早速改正セミナーに参加して、ざっと改正内容に目を通した段階ですが、(主に高齢)配偶者の住まいを確保するための配偶者居住権の新設や、葬儀代などを遺産の中から支出することができるようにする仮払い制度の新設、そして法的な要件を満たすことが非常に困難であった自筆証書遺言の方式緩和など、基本的には広く一般のためになる良い改正だったんじゃないでしょうか。
自筆証書遺言のこれまでの問題点と改正のねらいとは
民法学者でもなければ弁護士・司法書士でもないのに偉そうなことを言ってますが、難しい解釈はさておき、今後の相続に備えてこれから準備をおこなう方や、相続実務を行う我々税理士に影響の大きそうな自筆証書遺言についての改正にフォーカスしてまとめてみようと思います。
遺言 については、かなりレアなケースに認められる方式を除いて、次の3つの方式が定められています。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
いまさら、ここで僕が説明することでもないので詳しく触れませんが、もちろんそれぞれのやり方にメリットとデメリットがあります。
その中で、今回自筆証書遺言に関してのみ、その方式の緩和がなされたのにも当然に理由があるわけです。
その理由は大きく2つあるんじゃないかと思っています。
まず1つ目ですが、単純に自筆証書遺言の利用がドンドン増えていることが挙げられます。
自筆証書遺言は、基本的に被相続人が自宅等で保管することが多いため、作成された自筆証書の数を正確に把握することはできませんが、後で説明する家庭裁判所における検認の数が、次のグラフの様に増加の一途を辿っていることから、その作成数の増加は明白です。
検認数の推移
自筆証書遺言は、公正証書遺言と違って、家庭裁判所で相続人等の立ち合いのもと開封しなければならないとされています。
これを検認と言います。
民法第1004条
(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
しかし、ここがミソなんですが、
この検認の手続きを経ないで開封しても無効にはならないんです。
(※その旨が検認調書に記載はされるらしいですが。)
つまり、検認とはその遺言が法的に有効か無効かを判断する手続きではなく、あくまで検認日現在の遺言の内容を明確にして、その後の偽造等を防止するためのものなんですね。
となると、やっぱり意図的に検認手続きをせずに開封して、自分の都合のいいように遺言の内容を改ざんしてしまう輩が出てきますよね。。。
友人の弁護士にも聞いてみましたが、やっぱりそういう輩少なくないようです(笑)
ついでに
と教えてくれました。
少し話がそれましたが、自筆証書遺言の場合には、その遺言書の作成、保管の過程に被相続人である作成者本人しか関わらないことが可能なので、どうしても後に改ざんされてしまうというリスクは拭いきれません。
そこで今回の改正なんですが、そもそも、改正前には、その遺言書の全文を遺言者本人が自書しないといけなかったところが、遺言書と一体のものとして財産目録を貼付する際には、その目録は自書することを必要としないとされました。
民法第968条
(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
【2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(カッコ書き省略)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。】
【削除2】 【3】 自筆証書【(前項の目録を含む。)】中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
※青字が改正点です。
この改正の何が重要かって、これにより財産目録の作成は弁護士や司法書士、税理士等のプロに委託するケースが増えることじゃないかと思っています。
そうすると、これまで本人以外関わることのなかった自筆証書遺言に第三者、それもプロの目が入ることによって、後々の偽造、変造を少しでも減らすことができるようになるはずです。
今後ますます増加するであろう自筆証書遺言について、プロの目を介在させる余地を作ることで、不正やそれによる訴訟を減らすことが一つ大きな狙いだったんじゃないでしょうか。
そして、もう一つ自筆証書遺言書の欠点と言われていたのが、その作成に係る労力の大きさと、方式が厳格なため方式違反になって遺言が無効になってしまうリスクがあったことです。
作成にかかる労力と言われても、作成したことない人にとっては分かりにくいですよね(笑)
実際僕が大変だろうなと感じるのは、特に不動産に関する記載で、一つの物件について書くのに、相当な情報量を要するということです。
本来は、その財産が特定できるだけの情報があれば足りるのですが、きっちり書こうと思えば、例えば、分譲マンション1室について記載するだけでも次のようになったりします。
これを自書するとなると大変ですよね、やっぱり笑
特に高齢の方で、目も悪い、腕も上がらないというような方がこれだけ文字を書こうと思えば、大変な労力であることは容易に想像ができますし、かなりの確率で書き間違い等も起こるんじゃないかと思います。
実際に、形式不備や内容に不明確な部分があるといったことで、その遺言の有効性や解釈について争いになるケースが多いようです。
この件についても、前出の弁護士に尋ねてみました。
- 遺言書の一部が自筆じゃないとかいう程度の形式不備があった場合、内容すべてが無効になったりするんでしょうか?
という回答でした。
そして、具体的に
遺言者(外国人)が自筆でなくタイプライターを使用して作成したものについて適法かつ有効とされた事例
や、
不動産目録(目録と遺言書を対比してはじめて相続させる財産を特定できる内容となっていた)を司法書士がタイプライターにより作成した遺言書が無効とされた事例
を教えてもらいました。
それぞれ、裁判所がそう判断するのに細々とした基礎事実があるはずなので、ここからどういう場合はOKでどういう場合はNGなのかを読み解くことはできませんが、弁護士の先生が無効になる可能性が極めて高いというんですから、やっぱり不備があるものを認めさせるのは相当難しいんでしょうね。
今の高齢者の方がワープロ打ちに慣れているかどうかはともかくとして、自筆で大量の情報を誤りなく記載しないといけない現状と比べると、一部をプロに依頼することも含めて、かなり負担軽減になるんじゃないでしょうか。
そして、なにより形式不備などの凡ミスが減少し、遺言者の意志がきちんと実現するんじゃないでしょうか。
参考までに、この改正後は、自筆証書遺言はこのような形でOKということになります↓↓
ちなみにこの方式緩和の施行時期は、公布日(平成30年7月13日)から起算して6か月を経過した日とされています。
※施行日前にされた自筆証書遺言については現行制度が適用されますのでご注意ください。
自筆証書遺言の保管制度の創設
これまでお話しした方式の緩和と合わせて、これまで紛失や盗難・隠匿されるといったリスクを問題視されていた自筆証書遺言について、新たに保管制度を創設することで、そういったリスクについても軽減が図られています。
これは、実は民法の改正ではなくて、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という新しい法律が創設されて整備されたことなんですが、そんなことはどうでもいいです。
こちらの趣旨は、公証役場で厳重に保管される公正証書遺言とは異なり、自筆証書遺言は、作成後の紛失や特定の相続人による隠匿・変造のリスクがあるので、①それを回避するため、そして、②速やかに遺言の有無と内容を確認できるようにすることで、相続人の相続放棄等の判断に資するためということです。
具体的には、遺言者が遺言書保管所(=法務局)に自ら出頭して申請をすることで、法務局がその施設内において保管をしてくれるというものです。
自ら出頭しなければならないというのは、普及の妨げになる可能性はありますが、公正証書遺言のように証人を立てる必要がないことから結構ニーズを満たすものになるんじゃないでしょうか。
また、遺言書保管所に保管されている遺言書については、検認が不要とされていることも相続人の手間と費用負担を削減する観点から評価できますね。
この度の民法改正等は、一般の方には、まだあまり情報として届いてないんじゃないかと思いますが、今一度自身の遺言書を見直す契機、また作成する契機としてほしいですね~。
あっ、ちなみに僕が相談に乗るとしたらやっぱり自筆証書遺言でなく公正証書遺言をお薦めしますけどね(笑)
特に不動産をたくさん持っている方で、遺言書の見直しや作成をしようという方は、しっかりとしたプロにご相談くださいね。
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知ってる人だけ得してる《ちょっとマニアックな》不動産オーナーのための相続・承継の話