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不動産の財産評価は◯◯じゃ! – 税理士と不動産のプロ達による不動産相続のヒソヒソ話 https://hisohisofudosan.com Wed, 31 Jul 2019 01:20:05 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.3 民法(相続法)改正の目玉《配偶者居住権》の税務上の取扱いを確認する! https://hisohisofudosan.com/blog/1747 Thu, 28 Mar 2019 09:41:34 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=1747 先般の民法改正により創設された《配偶者居住権》が来年2020年の4月からいよいよスタートします。この制度が相続の実務に与える影響は思いのほか大きなものになりそうです。制度そのものの解説は他に譲り、ここでは相続税の計算に与 ...続きを読む

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先般の民法改正により創設された《配偶者居住権》が来年2020年の4月からいよいよスタートします。この制度が相続の実務に与える影響は思いのほか大きなものになりそうです。制度そのものの解説は他に譲り、ここでは相続税の計算に与える影響についてまとめておきたいと思います。

 

 

 

【とある家庭の相続】

 

 

 

 

 いきなりですけど、例えばこんな家庭の相続を想像してみてください。

 

 

 お金持ちには違いないですが、決して大金持ちと言われるような家庭ではありませんし、先祖代々の不動産を所有しているような地主一族でなくとも、一代で名の通った会社を創業した経営者の家庭でなくても、それなりの企業に勤めていた父親が急に亡くなったとしたらあり得るような財産・債務の内容及び金額かと思います。

 

 

 相続財産は、自宅の土地と建物と預金のみでまだ自宅の住宅ローンも少々残っています。

 

 

 

 これにプラスして、死亡を起因として受け取った生命保険金と会社からの退職金も相続財産とみなされます。

 

 

 小規模宅地の特例生命保険金、退職手当等の非課税限度額も考慮したあとの課税価格はざっと6,000万円です。

 

 

 こんな相続において、一般的にはどのような遺産分割がなされているでしょうか?

 

 

 

配偶者(母)がすべての財産を相続する。

 

 

 

 こんな分割パターンが最も多い遺産分割かもしれません。

 

 

 しかし、少し知恵を絞って、次に配偶者(母)が亡くなった場合の二次相続についても考慮しようということで、(小規模宅地の特例により)時価よりも相当低い課税価格で相続できる自宅の不動産を長男に相続させてしまおうというケースもあり得ますね。

 

 

 1人息子なのでどうせ、ゆくゆくは息子がこの家を引き継いでいくんだからと母親が気を回すこともあるでしょうし、周囲の税理士司法書士弁護士が二次相続も踏まえてそんな入れ知恵をすることもあるでしょう。

 

 

 もちろんケースバイケースですが、僕もこんな遺産分割を提案することもあります。

 

 

 上のケースでこのような遺産分割を採用したら相続税の税額はどうなるか、下の表を見てみてください。

 

 

 

 

 

 母が相続した財産の課税価格が3,500万円と、1億6,000万円を下回ることから、配偶者の税額軽減特例を適用して納付税額はゼロになります。

 

 

 ここから分かる通り、これくらいの相続財産のケースでは、すべての財産を母が相続したとしても配偶者の税額軽減が使えるので全く相続税の納付が不要になるんですね。

 

 

 しかし、二次相続対策も兼ねてあえて自宅不動産を長男に相続させる場合を考えてみます。

 

 

 すると、小規模宅地特例が大きな節税効果を発揮して、本来土地と建物で合わせて6,500万円(相続税評価額ベース)であるものが、2,500万円(課税価格)として相続税が課せられるわけです。

 

 

 税額はわずか756,000円

 

 

 アルバイトに精を出してお金を貯めれば本人が払うこともできる金額です(笑)

 

 

 そんなことをしなくても、母親が(暦年贈与で)非課税の範囲内で負担してやることもできる税額ですね。

 

 

 とすると、すべての財産を母親に相続させるよりも、いずれ引き継ぐ自宅を一回分の相続を飛ばして長男に相続させておくことは、色々な観点からより優れた遺産分割案のようにも思えてきます。

 

 

 それでも現実には、このような相続が発生した際の遺産分割においては圧倒的にすべての財産を母親が相続しているケースが多いように思います。

 

 

  なぜでしょうか??

 

 

 それを考えるには、配偶者居住権が創設されることとなった背景を考える必要があります。

 

 

 

配偶者居住権が創設されることとなった背景

 

 

 母親でなく長男に自宅不動産を相続させることの何が問題なのでしょうか?

 

 

 答えは簡単。

 

 

 長男がトンデモ息子で放蕩野郎だった場合を考えてみてください。

 

 

母親に対して家賃を請求する?(笑)

母親を家から追い出す?(笑)

勝手に第三者に売却してしまう?(笑)

 

 

 

 こんな親子関係あるわけないって?

 

 いやいや、こればっかりは現実にあるんですよ(笑)

 

 

 そして、これまでは法的にもそんなことが認められてしまって、配偶者である母親の普通の生活が簡単に脅かされる状況であったわけです。

 

 

 

 相続を機に親子関係が一変することもあれば、長男が結婚したのを機に母親を追い出してしまうくらいのことはむしろ茶飯事ではないでしょうか。

 

 

 放蕩の挙句、お金に困って勝手に売ってしまうことですら単なる笑い話ではありません。

 

 

 要はそんなことにならないように配偶者の居住権を保護してあげようというのが、この制度の創設の主旨だと思います。

 

 

 よく考えてください。

 

 

 こんな放蕩息子が世の中に存在しないのであれば、こんな法律を作る必要がないわけですよ(笑)

 

 

 まぁそこまでの放蕩息子のケースじゃなくても、「家は母が相続してもいいけど、法定相続分の財産はきっちりもらうからね」っていうタイプの息子だったらどうなるでしょうか?

 

 

 

 母親からすると自宅不動産は確保できるのはいいけど、その分金融資産を息子に相続させる必要があると、当面の生活資金はもとより、老後資金が心もとなくなるなんてことなりかねません。。

 

 

 母親の本音は、自宅は当然相続したい、かといって老後のことを考えると金融資産も相続しておきたいといったものでしょう。

 

 

 こうした問題を解決するために設けられたのが配偶者居住権であるというとグッと理解しやすくなったのではないでしょうか。

 

 

 子どもに配偶者居住権がついた不動産を相続させておけば、ある程度の分け前を与えたうえで、自分は家に住み続けられるし、金融資産もある程度確保できてめでたしめでたしというわけです。

 

 

 まぁまっとうな人間からすると、こんな制度が必要な社会であることが悲しく感じられますよね。。。

 

 

 

配偶者居住権が設定された不動産の評価

 

 

 むちゃくちゃ前フリが長くなりましたが、そんな配偶者居住権ですので、今後実務で設定を検討することが増えてくるのは明らかですね。

 

 

 では、この配偶者居住権が設定された土地、建物の財産評価はどのようにするのでしょうか?

 

 

 

 まずは上図でイメージを掴んでください。

 

 

 相続税の財産評価においても、配偶者居住権は評価すべきものとされています。

 

 

 これまでの相続税評価額が「配偶者居住権部分の相続税評価額」と「所有権部分の相続税評価額」に分かれるんですね。

 

 

 そして、配偶者居住権の相続税評価額は、本来の相続税評価額から所有権の相続税評価額を差し引く形で計算することとされました。

 

 

 建物と土地では少し考え方が異なる部分がありますので、まずは建物からみます。

 

 

 

 

 上の算式をみてもなかなかイメージが湧きにくいと思いますので、併せて下図を見てください。

 

 

 

 

 

 建物は土地と違って、当然耐用年数というものがあります。

 

 

 ですので、その耐用年数の範囲内において、配偶者居住権によって配偶者の使用権が保護された期間と、その保護が解かれて所有者が使用することができる期間に分けることができます。

 

 

 先の建物所有権の相続税評価の算式中の真ん中の分数は、建物の残存耐用年数に占めるこの所有者が使用できる期間の割合を求めているわけですね。

 

 

 建物の本来の相続税評価額にこの割合を乗じることによって建物所有権の評価を計算しているんです。

 

 

 そして、所有者が使用できるようになるまでの期間の分その額から複利現価率を用いて割り引いているわけです。

 

 

 ここまで理解するとなかなか合理的な評価方法であると腑に落ちるかと思います。

 

 

 ※印にあるように、この場合の耐用年数は、所得税でいう非業務用の減価償却資産の耐用年数を用いることは要注意です。

 

 

 

 

 

 そして、肝心の配偶者居住権の年数ですが、これは終身の権利として設定することもできるし、期間を定めて設定(配偶者の平均余命年数を上限とする)することもできることとされています。

 

 

 

 

 ちなみに、ここで用いる平均余命年数が相続税の世界で規定されていませんので、今後の通達等を注視する必要がありますが、念のため所得税の世界で用いられている「余命年数表」を掲載しておきます。

 

 

 これをそのまま援用するとされることもあり得ます。

 

 

 

 

 

 

 最後に複利現価率についても下記に表を掲げておきます。

 

 

 ちなみに民法の法定利率3%による複利現価率を用いることとされています。

 

 

 

 

 

 

 では、土地の方はどうでしょうか?

 

 

 土地は簡単です。

 

 

 耐用年数という考え方がないため、次の算式にあるように、本来の評価額に先に見た複利現価率を乗じて計算するだけです。

 

 

 

 

 

 

配偶者居住権の設定の有無による相続税の負担の相違

 

 

 ここまで理解した上で、はじめにみた相続のケースにおいて、長男に(不動産自体ではなく)その所有権だけを相続させ終身の配偶者居住権を設定したときのそれぞれの財産の評価と相続税の負担の相違を確認してみましょう。

 

 

 

 まずは、建物所有権建物にかかる配偶者居住権土地所有権土地にかかる配偶者居住権の相続税評価については、上のようになります。

 

 

 先に確認した算式を思い出しながらじっくりみてください。

 

 

 そして、この評価額に基づく相続税の税額ですが、次のようになります。

 

 

 

 配偶者の相続税負担は、配偶者の税額軽減によりやはりゼロ

 

 

 長男の相続税の負担が117,000円となりました。

 

 

 これは、土地所有権、土地にかかる配偶者居住権についても小規模宅地特例が適用できることを前提にしていますが、恐らく問題ないでしょう。

 

 

 また確実な情報が出ればお知らせできると思います。

 

 

 さて、不動産を丸ごと相続していた場合と比べていかがでしょうか?

 

 

 756,000円の税負担が117,000円ですから、すごい相続税の負担の圧縮ですよね。

 

 

 節税効果という意味では、自宅を配偶者からの二次相続をすっ飛ばして長男が所有できているのですから、正味の節税効果はもっと大きなもののはずです。

 

 

 母親の方は母親の方で、このケース以上に相続財産があるケースでは、自宅を丸ごと相続すると金融資産を確保できなくなる、あるいは相続税の負担が増えるといった可能性があるわけですから、所有権だけは息子に相続させておいて、自分は評価の低い配偶者居住権を相続して、他の金融資産をより多く確保するなり相続税の負担を抑える方があり難いのは言うまでもないですよね。

 

 

 こうなればどうでしょう?

 

 

 これまでは、ケースによっては最善の遺産分割と思われていた「とりあえず母親(配偶者)にすべての財産を相続させておこう。」というプランをとるべき積極的な理由がなくなってしまいましたよね?

 

 

 今後は二次相続をすっ飛ばして自宅を、(昔風にいうと)家督を引き継ぐであろう息子に相続させるというケースが増えるんじゃないでしょうか。

 

 

 いや、そうすべきケースが圧倒的に増えるんでしょうね。

 

 

 

 

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平成29年度の相続税の税制改正により、大きな土地の評価の方法が様変わりしました。平成6年に創設された従来の「広大地評価」については、最大65%(最低でも42.5%)というとても大きな評価減が受けられる制度であったものの、その適用の可否判断が非常に難しく、はるかに税理士の職域を超えてるんじゃないかと思われるほどで、適用の可否を争う裁判も頻発していました。そのような「広大地評価」が「地積規模の大きな宅地の評価」に生まれ変わったわけですが、改正から約1年が経過した今、その使い勝手や改正前後での適用の可否判定の変更点等をまとめておきたいと思います。

 

 

これまでの広大地評価の問題点と改正のポイント

 

 従来の相続税評価における広大地の評価については、その補正が個別の土地の形状等に関係なく面積に応じて比例的に減額されるものであったという技術的な問題を抱えていたこともさることながら、やはり、その適用要件が「定性的(相対的)」なものであったことから、広大地に該当するか否かの判断が非常に難解であったという点が問題視されておりました。

 

 

 そのため、平成29年度税制改正大綱により「広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化する。」という方針が打ち出されたわけです。

 

 

 従前の適用要件が定性的あるいは相対的なものであったことにより、どのような論点が生じていたかと言えば、主に次の3点が挙げられます。

 

 

① その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であるか否か

 

② 評価対象地が開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものに該当するか否か

 

③ 評価対象地がマンション等の適地に該当しないか否か

 

(引用:「地積規模の大きな宅地の評価」の実務―広大地評価の改正点と判例・裁判例― 沖田不動産鑑定士税理士事務所・広大地評価サポートセンター 新日本法規)

 

 

 上の文章を読むと、それがまさに定性的あるいは相対的なものであると感じていただけると思います。

 

 

 現実に、僕が広大地が疑わしい土地の評価に臨むときも必ず不動産鑑定士の先生にセカンドオピニオンを求めていました。

 

 

 

 正直、税理士としての知識だけでは到底判断しうるものではありませんでした。

 

 

 従前の制度である広大地の詳しい解説は省略しますが、結論としては、平成29年度の税制改正により、平成30年1月1日以後の相続、遺贈、贈与からは、その「広大地評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に生まれ変わり、その適用要件がかなり明確化されたわけです。

 

 

 従前の「広大地評価」において、論点とされていた上で紹介した3点について、税制改正によりいかにその判断がしやすいものとなったのか見てみましょう。

 

 

 まず、①の「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であるか否か」についてですが、「著しく」(=定性的)や「比して広大」(=相対的)などといったものから、「適用対象となる地積規模の大きな宅地=三大都市圏においては500㎡以上、それ以外の地域においては1,000㎡以上」と定量的簡潔な規定に置き替わりました。

 

 

 そしてさらに、②、③の「評価対象地が開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものに該当するか否か」「評価対象地がマンション等の適地に該当しないか否か」については、従来の「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地(道路、公園等)の負担が必要(潰れ地が生じる)と認められるものであること」および「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの)ではないこと」といった曖昧模糊な判断基準は廃され、通達の適用要件に該当しさえすれば適用可能という形に整理されました。

 

 

どのような大きな宅地が対象となるのか

 

 税制改正後の「地積規模の大きな宅地」として規模格差補正を適用できる宅地の要件をみてみましょう。

 

 

 新設された財産評価基本通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)は非常に簡潔で分かりやすいものなので、読めばその適用要件が理解できますが、より視覚的に理解しやすいフローチャートをご覧ください。

 

 

 ちなみに、これは資産評価企画官情報第5号・資産課税課情報第17号(平成29年10月3日)に載っていたものを引用しています。

 

 

 

 

 

 ポイントは、主に「面積」「地区区分」「都市計画上の区域と用途地域」「容積率」の4点に絞られ、それぞれ定量的に判断がしやすいものとなりました。

 

 

 

面積:三大都市圏に所在する宅地については500㎡以上、それ以外の地域に所在する宅地については、1,000㎡以上であるか

 

地区区分:普通住宅地区ないし普通商業・併用住宅地区に所在するか

 

都市計画:市街化調整区域(開発行為ができる一定の地域を除く)以外の地域に所在するか、また、用途地域が「工場専用地域」以外

 

容積率:東京都の特別区に所在する宅地については300%未満、それ以外の地域に所在する宅地については400%未満であるか

 

 

 

 これは「地積規模の大きな宅地の評価」を適用して申告する場合に「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」に添付して提出することとなる「『地積規模の大きな宅地の評価』の適用要件チェックシート」より抜粋しているので、元のチェックシートもぜひ一度見ておいてください。

 

(国税庁HP:適用要件チェックシート

 

 

 そして、これにより適用可能と判断した宅地について、その評価額をどのように計算するのかですが、従前の広大地評価の場合の算式と比較してご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 2つの評価額の計算式を見比べて補正の名称が変わった以外にも、大きく変わった点がありますが分かりますでしょうか?

 

 

 従来の「広大地補正率」は、「土地の個別的要因に基づいて最も経済的・合理的な使用の観点から算定された鑑定評価額を基に統計学の手法を用いて設定しており、土地の個別的要因に係る補正がすべて考慮されたもの」(資産評価企画官情報第5号・資産課税課情報第17号(平成29年10月3日))であったことから、個別的要因に係る補正、つまり評価通達15(奥行価格補正)から20(不整形地の評価)まで及び20-3(無道路地の評価)から20-6(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めを適用せずに、正面路線価に広大地補正率を掛けて地積をさらに乗じるだけというものでした。

 

 

 ちなみにセットバック部分のしんしゃくも織り込み済みとされていましたので、広大地とセットバックの併用もあり得ませんでした。

 

 

 ところが、これではやはり土地の個別的要因をカバーしきれていなかったという反省から、改正後の取り扱いでは、これらの各種補正率を乗じたあとに新設の「規模格差補正率」を乗じることとされました。

 

 

 しかし、納税者にとって有難くないことにトータルの評価の減額割合は従前よりも減少することとなるケースが多いようです。

 

 

 そのことは、次の「規模格差補正率」と「広大地補正率」の比較表をみれば一目瞭然です。

 

 

 

 

 

 同じ地積の土地で見比べると、結構減額割合が減少していることが分かります。

 

 

 先に言ったように「地積規模の大きな宅地」の場合には、その他の各種補正を併用できることから、多少はこのギャップの穴埋めをすることが可能(もちろん、理論上は場合によっては従前の評価以上に減額割合が高まることもあり得る)ではあります。

 

 

 我々税理士や納税者の方が改正後に気をつけないといけないのは、この改正により大きな土地について相続税評価額が時価を大きく上回るケースも増えるということです。

 

 

 

 そんな場合には、鑑定評価を含めさらなる検討が必要ですね。

 

 

こんな土地でも対象に!?

 

 多くの土地で改正前より減額割合は減少しそうとはいえ、その適用対象が拡大したことは喜ばしいことです。

 

 

「えっ??適用の可否判断がしやすくなったのは分かるけど、適用対象は拡大してるのかって?」

 

 

 改正から一年間実務に携わってきた者の実感として、それは間違いないかなと思います。

 

 

 一番実感があるのが、相続発生時点で現にマンションが建っている宅地についてです。

 

 

 従前の取扱いでは、(100%とは言えないまでも)ほぼ広大地評価を適用することができなかったマンション敷地についてですが、改正後の取扱いでは、適用要件さえクリアすれば規模格差補正を適用することができちゃいます。

 

 

 実務で出くわしても、一瞬「どうせ適用できないよな」って流してしまいそうになります(笑)

 

 

 いまも、地方の某政令市のマンション敷地についての評価を行っていますが、1,000㎡を超える大きな土地に5階建てのマンションが建っているという宅地があります。

 

 

 この宅地、市街化区域で用途地域は「近隣商業地域」、建ぺい率80%に容積率は200%、地区区分は普通住宅地区ときてます。

 

 

 

「あれ?これ、いけるやん(笑)」

 

 

 フローチャートと適用要件チェックシートを二、三度見返しました(笑)

 

 

 こういう事例で、ちょっとヒヤッとさせられた税理士の先生も多いのではないでしょうか。

 

 

 ヒヤッとするだけならいいですが、呑気な税理士に当たって適用の検討さえされない申告も巷ではいっぱいありそうです。

 

 

 ほかにも、これまで税理士泣かせであった(宅地開発にあたり)開発道路が必要かの判断で、「旗竿(路地状)開発」や「羊羹切り開発」が可能なため、広大地の適用要件を満たさないとされていたような土地についても(ややこしい判断も不動産鑑定士の先生に図面を書いてもらうことも不要で)とにかくすべての要件を満たしさえすれば適用ができることとなったんです。

 

 

 

 

 これまで、マンション適地旗竿開発可能という判断により見送られていた土地は結構ありました。

 

 

 それがこのように今税制改正により適用可能となる宅地も多いですから、是非検討漏れのないように気をつけたいものです。

 

 

 相続税の更正の請求案件も増えるかもしれませんね。

 

 

 案外誤りを起こしがちなケースというのは、そもそも土地の利用単位の判定誤りにより、本来補正が掛けられたものが掛けられていなかったというようなケースかなと思います。

 

 

 相談が増えたら、僕としては仕事が増えてあり難い限りですが笑

 

 

 それにしても、改正されて振り返ってなおさら思いますが、不動産のプロでない税理士によくこんな不動産に関する詳しい知識を要する判断をさせていたなと。。恐ろしい話です。

 

 

 

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貸付事業用宅地に関する小規模宅地特例の改正をぐっと掘り下げて考えてみた! https://hisohisofudosan.com/blog/1487 Fri, 02 Nov 2018 06:16:28 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=1487 平成30年度の税制改正大綱が出た時点でもブログ(【平成30年度税制改正大綱】小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例見直し~貸付事業用宅地の見直し案~について思うこと)に書きましたが、実際平成30年4月1日以後 ...続きを読む

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平成30年度の税制改正大綱が出た時点でもブログ(【平成30年度税制改正大綱】小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例見直し~貸付事業用宅地の見直し案~について思うこと)に書きましたが、実際平成30年4月1日以後の相続から貸付事業用宅地に関する小規模宅地特例について若干の規制が加えられています。

 

 

規制の対象となるケース、ならないケース

 

 前回のブログでは、小規模宅地特例の対象となる貸付事業用宅地の範囲について、「相続開始前3年以内に貸付を開始した不動産が除外される(ただし、事業的規模で貸付を行っている場合を除く。)」と説明しましたが、今回はもう少し詳しく図示しながら見ておこうと思います。

 

 

 ※図のなかの「貸付」とあるのは、それ単独では特定貸付に該当しない物件をイメージしてください。

 

 

 

 上図を見ていただけば分かるように、原則として相続開始前3年以内に貸付を始めたものは対象外となります。

 

 その貸付が特定貸付事業に該当する場合であってもです。

 

 しかし、これには例外があります。

 

 ここの理解ができていないと小規模宅地特例の適用にあたって不利益を被ってしまう可能性があるので要チェックです。

 

 それが上図の3番目のケースですが、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っている場合です。

 

 この場合には、相続開始前3年以内に貸付を開始したものを小規模宅地特例の適用対象として選択することも認められます。

 

 

 そもそも今改正で規制が入った主旨は

 

 

相続の直前に(相続が発生することを見越して(笑))相続税の節税を意図して開始した貸付事業に関する宅地については適用したらダメ

 

 

 ということでした。

 

 しかし、実際には、相続開始の日の3年前から引き続き特定貸付事業を行ってさえいれば、相続の直前に相続が発生することを見越して、その特定貸付事業の用に供しているもの以上に大きな減額を受けることができる物件を取得し、その物件について特例の適用を受けることができるということなんです!

 

 具体的には、土地単価の低い郊外に3年以上大規模なマンションを所有している者が、相続直前により大きな節税効果を得るために都心のワンルームを購入し、ワンルームにかかる土地について小規模宅地の特例を適用するようなことが考えられます(笑)

 

 もう一つ、これはおまけですが、相続開始前3年以内に貸付を始めたものが適用対象となるケースが下図のような場合です。

 

 

 

 
 

 取得が3年以内だからといって早とちりして、適用できないと判断しないように注意が必要です。

 

 

 

特定貸付事業とは何なのか?

 

 さりげに特定貸付事業とか言ってますが、その定義についても実はややこしい論点があるので確認が必要です。

 

 

 

租税特別措置法関係通達69の4-24の4

 

  特定貸付事業の意義

 

 

措置法令第40条の2第16項に規定する特定貸付事業(以下69の4-24の8までにおいて「特定貸付事業」という。)は、貸付事業のうち準事業以外のものをいうのであるが、被相続人等の貸付事業が準事業以外の貸付事業に当たるかどうかについては、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で当該貸付事業が行われていたかどうかにより判定することに留意する。

 

 

なお、この判定に当たっては、次によることに留意する。

 

(1) 被相続人等が行う貸付事業が不動産の貸付けである場合において、当該不動産の貸付けが不動産所得(所得税法(昭和40年法律第33号)第26条第1項《不動産所得》に規定する不動産所得をいう。以下(1)において同じ。)を生ずべき事業として行われているときは、当該貸付事業は特定貸付事業に該当し、当該不動産の貸付けが不動産所得を生ずべき事業以外のものとして行われているときは、当該貸付事業は準事業に該当すること。

 

(2) 被相続人等が行う貸付事業の対象が駐車場又は自転車駐車場であって自己の責任において他人の物を保管するものである場合において、当該貸付事業が同法第27条第1項《事業所得》に規定する事業所得を生ずべきものとして行われているときは、当該貸付事業は特定貸付事業に該当し、当該貸付事業が同法第35条第1項《雑所得》に規定する雑所得を生ずべきものとして行われているときは、当該貸付事業は準事業に該当すること。

 

 

(注) (1)又は(2)の判定を行う場合においては、昭和45年7月1日付直審(所)30「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)26-9《建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定》及び27-2《有料駐車場等の所得》の取扱いがあることに留意する。

 

 

 

 小規模宅地特例の適用対象となる「貸付事業用宅地」とは、被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地とされているわけですが、まずここでいう「貸付事業」についても案外誤解している方が多いんです。

 

 一般的には、いわゆる不動産貸付業の対象となる土地だけをイメージしがちですが、不動産貸付業のほか駐車場業自転車駐車場業、そして準事業と呼ばれるものの用に供されていた宅地も対象となりえます。

 

 

 

 

 そして、その貸付事業のなかで準事業以外のものを「特定貸付事業」と呼んでいます。

 

 しかし、被相続人等の行う貸付事業が準事業以外の貸付事業に該当するのかどうかについては、これまた様々な論点があり頭を悩ませるポイントでもあるんです。

 

 

 

 

 例えば、上図にあるようにその事業が不動産貸付業であったとしても、それが事業的規模でない不動産貸付業であれば、ここでは準事業とされてしまいます。

 

 

事業的規模か否か

 

 不動産貸付業の事業的規模に関しては、「確定申告で不動産貸付業の『事業的規模の判定』を間違えるな!」で説明したとおり、一般的には、所得税基本通達26-9で示されている「5棟10室基準」によって判定することが多いのですが、ここで注意が必要なのはこの「5棟10室基準」は、これを満たせば事業として行われている(事業的規模)ものとするという十分条件を定めたものに過ぎないということです。

 

 つまり、この基準を満たしていないからイコール事業にあたらない、つまり事業的規模でないと判断するものではないんです!

 

 では、どう判断するのかというと、実は税法にその答えはないので裁決なんかで示された見解を参考に判断することとなります。

 

 

 

 

 上の7つのポイントのなかでも、裁決をみていると、③と④はとりわけ重視されているような気がします。

 

 ③と④を満たさないことで事業的規模でないと判断された事例が多いからかもしれませんが。。(笑)

 

 これを逆に考えると、10室もないアパートにかかる宅地であったとしても、その賃貸がサブリース等でなく自身で募集業務を行ってその空室リスクを抱えていたり、いわゆる管理人として設備等の管理・補修業務、集金業務等を行っていたりする場合には、適用対象となる(事業とみなされる)可能性があるということです。

 

 基本的に税理士は保守的な生き物で、申告した後に税務署に否認されることを嫌がるので、こういう微妙な案件について、5棟10室基準を絶対的な基準かのように捉えて適用の可否を杓子定規に考えることが多いですので、納税者となる方はぜひここのトコロをよく理解して顧問税理士に相談してほしいと思います。

 

 話を戻しますが、駐車場業・自転車駐車場業にもややこしい論点があります。

 

 結論から言うと、駐車場業等のうち雑所得となる貸付事業については、ここでは準事業として取り扱われ、特定貸付事業にはあたらないこととなります。

 

 

 

 

 ちなみに、駐車場業等を営む場合、その所得は事業所得雑所得不動産所得の3つのいずれかに該当することとなります。

 

 

 

 このうち事業所得か雑所得かの判定は、事業の営利性や反復継続性等の社会通念から判定することとされていますが、現実には、上の不動産貸付業の事業的規模に該当するか否かの7つのポイントと同様ですね。

 

 「自己の責任において他人の物を保管する場合」というのも分かりにくい表現ですが、コインパーキングのようなものをイメージしていただけばいいですね。

 

 普通の月極駐車場の場合には、その所得は不動産所得と扱われることとなり、準事業となるか否か、ひいては特定貸付事業に該当するかどうかは、やはりその月極駐車場の貸付が事業的規模で行われているかどうかで判断することとなります。

 

 ちなみに月極駐車場を先の「5棟10室基準」にあてはめると「駐車スペース5台分=1室」と換算して判定できるとされています。

 

 実は最近の税務通信という業界紙で読むまで聞いたことありませんでしたが・・・(笑)

 

 

 

 

 月極駐車場だけをしていたとしても50台以上であれば事業とみなされるわけですが、先の7つのポイントなんかに照らすと月極駐車場なんかは50台くらいではとても事業と呼べないんじゃないかと個人的にはおもいますが、まぁ5棟10室基準が十分条件として通達に示されてるわけですから、ここは深く考えるのはやめましょう(笑)

 

 

 ちなみに自転車駐車場、つまり駐輪場の場合は20〜25台分くらいでようやく1室のカウントとなるんでしょうか笑

 

 と、まぁ色々とややこしい判定が必要だということが分かっていただけたかと思います。

 

 世の中の失敗は、「思い込み、傲慢、情報不足」の3つに基因すると「いつやるの?今でしょ!」の林先生がTVで言っていたと思いますが、税務における失敗もまさにそうで、思い込みをなくして、何事もしっかり調べて情報を集めた上で最適な解を導き出したいものです。

 

 

 

 

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投稿 地役権とか区分地上権の確認のお漏らしに要注意!税理士と不動産のプロ達による不動産相続のヒソヒソ話 に最初に表示されました。

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道路に接道しない無道路地のため前面の土地を通行させてもらってるとか、電力会社からその土地の上空に送電線を通すために地代を受け取っているとか、地役権とか区分地上権って、実はそのコトバからイメージするより実はずっと身近なものなんです。

 

 

地役権の内容と種類

 

 「地役権」なんて聞くと、なんとなく難しそうで、素人の方は自分で調べる気にもならんでしょうから、できる限り簡単にご説明したいと思いますが、まずは民法の下の規定をみてください。

 

 

民法第280条

(地役権の内容)

 

 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。

 

 ただし、第3章第1節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

 

 

 って、よ~分からんですよね。笑

 

 具体的には、他人の土地を通行するために設定する「通行地役権」や、他人の土地を利用して水を引くために設定する「引水地役権」、自分の土地の崩壊を防ぐために擁壁の設置を目的として設定する「擁壁地役権」などが代表的な地役権です。

 

 その他にも「日照地役権」や「眺望地役権」なんかもありますが、実務で一番出くわす地役権は、僕のイメージでは何といっても電力会社なんかが設定する送電線路の設置等を目的とした地役権です。

 

 

 ちなみに、地役権を設定することで利用価値が高まる土地を「要役地」、利用される土地を「承役地」と言います

 

 

 

 

 

 

 イメージしやすいように代表的な地役権を図にしてみましたが、いかがでしょうか?

 

 

 なんとなく、地役権がどんな場合に設定される権利(物権)かイメージしていただけたでしょうか?

 

 実際、(電力会社に)地役権を設定された土地(承役地)の登記簿謄本(乙区)を参考までにつけておきます。

 

 

 

 

 

 

 少し、見にくいですがその設定の目的欄には次のように書かれています。

 

 

「電線路を架設すること。電線路の保守、改良、増架、再設(支持物の種類変更を含む)、撤去等のため、立ち入り工事を施工すること。電線路の支障となる建造物の築造、樹木等の植栽、土地の形状変更をしないこと」

 

 

 ちなみに、僕が実務で出くわしたこのケースでは、承役地の所有者(=設定される側、相談者)が地役権の設定の対価を受け取っておられたので、地役権が設定されていることを当然に認識していただいていました。

 

 また、仮に本人(=相談者)が地役権の存在を認識していなかったとしても、このケースについては、その地役権が登記されていたので登記簿謄本(上図参照)を見れば気づくことができます。

 

 しかし、地役権のタチの悪いのは、このケースのようにすべてのケースで対価の授受があるわけでもなく必ずしも登記されているわけでもないということなんです。

 

 

相続税の申告の際に怖い「地役権」の見落とし・・・

 

 

 何が怖いって、それはやっぱり相続税の申告をする際に評価対象地に地役権が設定されていることに気づかずに評価してしまうことです。

 

 なぜかって??

 

 それは、地役権が設定されている土地については、評価減をとることができる可能性があるからですよ!

 

 しかもそれは、不動産鑑定評価において・・・なんてものではなく、きちんと財産評価基本通達で定められた評価減なんです。

 

 ってことは、税理士としては確認して当然の事項なんです、本当は。

 

 

 しかし、わざわざ僕がこのネタをブログにしてるってことは分かると思いますが、現実には確認がされずに申告されているケースが多いんじゃないかと思ってます。

 

 では、早速ですが、財産評価基本通達を見てみてください。

 

 

 財産評価基本通達27−5

(区分地上権に準ずる地役権の評価)

 

 区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となつている承役地である宅地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によつて評価する。

 

 この場合において、区分地上権に準ずる地役権の割合は、次に掲げるその承役地に係る制限の内容の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合とすることができるものとする。(平3課評2-4追加、平6課評2-2改正)

 

(1) 家屋の建築が全くできない場合
 100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合いずれか高い割合

 

(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合
 100分の30

 

 

 

 簡単にいうと、地役権を設定された土地(承役地)を評価する際、地役権が設定されていることにより家屋の建築や構造・用途等について制限を受ける場合には、およそ30~50%の評価減をとることができるということです。

 

 

 まだわかりにくい人のために、改めて分かりやすく算式にすると次のようになります。

 

 

 


 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の価額

 =自用地としての価額 − 区分地上権に準ずる地役権の価額(※)


 

 

 これを見落としていると大きいですよ!!

 

 

 評価額が大きく変わります

 

 

 税理士が見落としたことにより、納税者に過大な相続税・贈与税を払わせてしまった場合には、税賠訴訟を起こされかねません。

 

 先にもちらっと触れましたが、これがすべて登記されていれば、大概は評価する際に気づくことができると思うんですが、そうでないのがやっかいですよね。

 

 今回はあまり触れませんが、鉄道や自動車専用道路の地下トンネルなどを目的とする区分地上権の場合は、ほとんど登記されているんですが、地役権の場合は、個人間での設定となることが多いこともあってか、設定はするけど登記はしないことがちらほらあるんですね。

 

 

 

送電線路の設置のための地役権は倍率地域にも多いですが・・・

 

 

 送電線路の設置のための地役権が一番実務で出くわすんじゃないかと先に言いましたが、地役権を設定しないといけないような高圧線って結構郊外というか田舎のほうでよくみかけませんか?

 

 高圧線のイメージは、このブログのタイトル横の写真です。

 

 実際、先に謄本を見てもらった僕が実務で初めて出くわした地役権も、北海道の登別(ちなみに要役地は、室蘭市)の話でした。

 

 登別市は、市街化区域市街化調整区域が混在しており、市街化区域は路線価方式で市街化調整区域は倍率方式によって評価することとなるエリアです。

 

 倍率地域では、自用地としての評価額はどうなるかといいますと。。。

 

 

財産評価基本通達21

(倍率方式)

 

 倍率方式とは、固定資産税評価額(地方税法第381条(固定資産課税台帳の登録事項)の規定により土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(同条第8項の規定により土地補充課税台帳とみなされるものを含む。)に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によつて評価する方式をいう。

(昭41直資3-19、平3課評2-4、平11課評2-12改正)

 

 

 倍率方式において、大体「固定資産税評価額×1.1」(登別市の倍率地域の倍率も「1.1」)という計算になります。

 

 が、こうして計算した評価額に、同じように「区分地上権に準ずる地役権の割合」を掛ければいいんでしょうか?

 

 

 早とちりして「そら、そやろ」なんで思わないでくださいよ!(笑)

 

 ちゃんとそれも規定されています。

 

 財産評価基本通達25-2

(倍率方式により評価する宅地の自用地としての価額)

 

 倍率地域にある区分地上権の目的となつている宅地又は区分地上権に準ずる地役権の目的となつている承役地である宅地の自用地としての価額は、その宅地の固定資産税評価額が地下鉄のずい道の設置、特別高圧架空電線の架設がされていること等に基づく利用価値の低下を考慮したものである場合にはその宅地の利用価値の低下がないものとして評価した価額とする。

 

 なお、宅地以外の土地を倍率方式により評価する場合の各節に定める土地の自用地としての価額についても、同様とする。(平3課評2-4追加)

 

 

 これ、どういう意味か分かりますか?

 

 

 むちゃくちゃ大事な通達ですよ!

 

 

 ややこしいんで、赤字部分だけを繋げて読んでみてください。

 

 

 それでも難しいかもしれません。

 

 

 というのも、固定資産税の評価についての理解がないとチンプンカンプンになる可能性がありますから。。

 

 

 固定資産税の評価の世界では、相続税の財産評価基本通達と同様の奥行価格補正や間口狭小補正、奥行長大補正、不整形地補正等のほか、それぞれの地域の価格事情を踏まえた「所要の補正」というものをそれぞれの自治体が定めているんです。

 

 そして、今回地役権の話で登場した送電線路の設置の有無などは、自治体によっては、この「所要の補正」により固定資産税評価額の算定の過程ですでに減額補正されているケースがあるんですね。

 

 上の財産評価基本通達25-2は、固定資産税評価額にその利用価値の低下が反映されているものにまで地役権設定による減額補正は(重ねて)しませんよということを言ってるんですね。

 

 

 なんとなく理解できてきましたか??

 

 「所要の補正」について、まだ少しイメージしづらいかもしれませんので、大阪市固定資産税評価要領に記載のある「所要の補正」のうち、地役権や区分地上権の評価減に影響のありそうなものを紹介しておきます。

 

 

①高圧線の下にある土地の評価

 

高圧線(電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9 年通商産業省令第52 号)第2条に規定する特別高圧の電線をいう。)の下にある土地については、通常の用途に供することができない部分があるためその利用価値が著しく低下していると認められるため、その面積に占める高圧線のある部分(「電気設備の技術基準の解釈」第97 条及び106 条に規定する離隔距離の範囲内とする。)の投影面積の割合(「投影面積割合」という。)に応じて、次に定める補正率表により求めた補正率によって、その評点数を補正することができる。

 

  

 

なお、電圧その他の事情により、極度に利用上の障害がある場合にあっては、さらに10 パーセント以内の評点数を控除することができる。

 

・「電圧その他の事情」とは、次に該当するものをいう。

  A 電圧の高さ

  B 地表から電線までの距離

  C 土地に占める電線の位置

  D 地積

  E 地役権その他の用益権の設定契約の内容

  F その他

 

・「極度に利用上の障害がある場合」の判定にあたっては、都市計画法の用途地域、地区、建築基準法の延べ面積の敷地面積に対する割合(容積率)、建築面積の敷地面積に対する割合(建ぺい率)及び周辺土地の標準的な利用状況等を考慮すること。

 

 

②地下阻害物により利用制限を受けている土地の評価

 

・「地下阻害物」とは、次に該当するものをいう。

 

  A 地下鉄道構築物

  B 上水道施設

  C 公共下水道施設

  D 堤防護岸タイロッド

  E 地中電線路

 

地下阻害物により利用制限を受けている土地について、当該阻害物により価額に影響があると認められる場合は、当該土地の面積に占める地下阻害物のある部分の投影面積の割合(「投影面積割合」という。)に応じて、次に定める補正率表により求めた補正率によって、その評点数を補正することができる。

 

 

 

 

 まぁ、同じ要素において重複して減額されるのはおかしいので当たり前の話ですが、問題は、固定資産税の評価において、27−4(区分地上権の評価)や27−5(区分地上権に準ずる地役権の評価)によって評価減するのと同じ要素について、このような所要の補正が掛けられているのかどうかどのように確認するかということですよね??

 

 まさに税理士の腕の見せ所なんでしょうが、固定資産税に明るい税理士が少ないせいか、ここまでの確認がスルーされているケースが多いようです。

 

 固定資産税評価額において、既にその要素について評価減がなされているのに、誤って相続税の評価においてさらに地役権の評価額を減額して評価しているようなケース、あるでしょうね〜笑。

 

 相続税の更正の請求を専門にやっている税理士なんかに聞くと、そもそも地役権や区分地上権の評価減については、見逃され、検討もされていないことが多く、この項目での更正の請求(つまり還付請求)が結構あると言います。

 

 評価減できる項目を見逃されているのも、誤って二重に評価減されて、あとから余分に追徴食らうのもどっちも御免こうむりたいですよね~笑

 

 しかし、地役権については、通行地役権一つとっても時効取得の問題やなんや、すごく難しく税務だけで完結しないことがあるんで、僕も一回弁護士さんにこの辺のこと詳しく聞きたいなと思っています。

 

 そのうちインタビュー記事にまとめられたらと思いますので、乞うご期待。

 

 

 

 

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 非上場株式、税務上のコトバでいうと「取引相場のない株式」ですが、この評価の実務においては、頭を悩ませる問題が数多くあります。その代表的なものが、不動産の取扱いの問題です。

 

 

 

取引相場のない株式の相続税評価額

 

 

 いきなり固い話ですが、取引相場のない株式の評価方法については、原則として大会社、中会社及び小会社の区分に応じて、それぞれ次のように定められています。

 

 

 今回は、株価評価における不動産の取扱いがメインテーマですから類似業種比準価額ではなく赤字の「1株当たりの純資産価額」について詳しく見ていきます。

 

 いわゆる純資産価額方式と言われる方式により計算されるケースですね。

 

 この純資産価額方式の計算方法は、財産評価基本通達の185に規定されています。

 

 

 185の前段を要約すると次のようなことが書かれています。

 

 

1株当たりの純資産価額」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(※)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。

 

 

 

 

 ここで重要なのが(※)のカッコ書きですが、不動産の取り扱いについて次のようなことが書かれています。

 

 

 「原則

 評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等並びに家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとする。

 

 「例外

 当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。

 

 

 この原則により、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等(土地及び借地権等)、家屋等(家屋及びその附属設備・構築物等)の価額は、財産評価基本通達に則して路線価方式等により評価するのではなくて、課税時期における通常の取引価額、つまり「時価」によって評価しなさいよということになってるんですね。

 

 

 ここで、ちょっと違和感を感じる人がいるかもしれませんね。

 

 

 「そもそもすべての財産は時価評価されるんじゃないの?」 と・・・

 

 

 ここで確認しないといけないのが、下の財産評価基本通達1の時価の意義についてです。

 

 

 このブログでは、もう何度も確認していますね。

 (参照「『借入による不動産の取得スキームはもう使えない』は本当か?〜衝撃のアノ裁決事例を改めて読んでみた!〜」

 

 

 

 〜財産評価基本通達1の(評価の原則)(2)「時価の意義」より〜

 

 

「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達によって評価した価額による」

 

 

 と、されています。

 

 

 そもそも時価とは客観的交換価値ですが、それを完璧に網羅的に評価方法を定めることができません。

 

 

 ですので、ある意味評価の安全性を担保する意味で客観的交換価値の80%~100%の幅を持たせた価額に落ち着くように通達が定められているんです。

 

 

 言い換えれば、通達評価額を時価と擬制してるんですね。

 

 

 そこで話を戻しますが、先の例で、課税時期の直前に取得又は新築しているということは「時価」がはっきりとしています

 

 

 そのようなケースにおいてまで、通達評価を時価と擬制する必要はないだろう、むしろ不適切であろうということですね。

 

 

 だから時価を用いろとなるわけです。

 

 

 

 

 

 

たな卸資産に該当する不動産は「1株当たりの純資産価額」の計算上どのように取り扱うのか

 

 では、評価会社が不動産販売会社などの場合で、たな卸資産として不動産を持っているケースはどのように評価するんでしょうか?

 

 これは結論としては、土地や家屋としての通達評価ではなく、「たな卸資産」として財産評価基本通達の規定に則して評価することとなります。

 

 

 

財産評価基本通達
133(たな卸商品等の評価) ※一部抜粋

 

(1) 商品の価額は、その商品の販売業者が課税時期において販売する場合の価額から、その価額のうちに含まれる販売業者に帰属すべき適正利潤の額、課税時期後販売の時までにその販売業者が負担すると認められる経費(以下「予定経費」という。)の額及びその販売業者がその商品につき納付すぺき消費税額(地方消費税額を含む。以下同じ)を控除した金額によつて評価する。

 

 

 

 

 

 ここで注意すべきことは、先に確認した課税時期前3年以内に取得・新築した不動産について時価評価が必要という規定は、たな卸資産である不動産には適用されないということです。

 

 課税時期前3年以内に取得・新築したものであっても、たな卸資産として評価すればいいということです。

 

 

 ややこしいですね〜。。

 

 

 

法人税法上の取引相場のない株式の時価と不動産

 

 

 専門家以外にはあまり知られていないことですが、税務上の時価といっても一つではありません。

 

 そもそも時価なんてもの自体、立場や状況によってさまざまな考え方が可能なものであるので、算定方法を一つに定めることに無理があるのですが、少なくとも税務の世界では、根幹の財産評価基本通達に定める相続税法上の時価のほか、法人税法上の時価所得税法上の時価があります。

 

 この辺りは、牧口晴一先生の「非公開株式の譲渡の法務・税務(中央経済社)」に詳しいので、詳しく知りたい方はそちらをご読みください。

 

 税務に忠実に考えると、売り手と買い手でとるべき時価が異なるケースもありうるという非常に難解な世界です。

 

 ここでは、非常にシンプルに(支配的立場にいる)個人が法人に株式を譲渡する際には、所得税法上の時価、同じく(支配的立場にいる)法人が、個人ないし法人に譲渡する際には、法人税法上の時価を用いなければならないケースがありますよくらいに理解しておいてください。

 

 財産評価基本通達による相続税上の時価を用いるのは、基本的には、個人間の贈与・相続のケースのほか、個人間の譲渡のケースになります。

 

 

 

 

 

 それぞれの時価の算定方法等を定めた規定をまとめると上の表のようになりますが、ここでは、法人税法上の時価に着目します。

 

 法人税法上の時価の算定方法については、法人税基本通達9−1−13に則して次のようなフローにより決定することとなります。

 

 

 

 見ていただいていかがでしょうか?

 

 これは現実的にはほとんど9-1-14の規定により算定する、つまりは、相続税の財産評価基本通達に倣った評価方法により算定するということになりますよね。

 

 直近で売買実例なんてそうそうないですし、公開途上の会社なんてもっとないですし、業種だけでなく、会社の規模や損益の状況等すべてにおいて類似の会社なんてそもそも存在するのかどうかすら怪しい話です笑

 

 そこで、9−1−14の出番となります。

 

  財産評価基本通達

  9-1-14(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)

 

 法人が、(一部省略)、事業年度終了の時における当該株式の価額につき「財産評価基本通達」の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り次によることを条件としてこれを認める。

 

 (1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

 

 (2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時(課税時期)における価額によること。

 

 (3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

 

 

 

 

 この第2条件にある「土地等又は上場有価証券を有しているときは、譲渡時の時価によって評価する」というのが今日の論点の一つです。

 

 そうなんです。

 

 法人税上の時価を算定する際には、土地は時価評価しないといけないんです。

 

 社歴のある会社ですと、創業以来ずっと本社の建っている土地を都心にもっている会社などは、時価が簿価に対して著しく膨らんでいるようなケースがあるわけです。

 

 相続税評価額と比べても50~100%ほど時価が高いということもざらにあります。

 

 となると、通達評価額を用いる相続税上の時価と時価を用いなければならない法人税上の時価大きく乖離することがありえます。

 

 時価算定の際には、その売り手と買い手の状況によって用いるべき時価の選択をくれぐれも間違えないようにしなければなりません

 

 そして、もう一つ論点の整理です。

 

 

 ここでいう「土地(土地の上に存する権利を含む)」なんですが、

 

 

 たな卸資産に該当する土地を含むんでしょうか?

 

 

 これ、実はすごく悩んだことがありまして、条文等を追いかけてもなかなか答えが見当たらない。

 

 法人税基本通達9-1-14の主旨から言って、たな卸資産に該当する土地であっても時価評価が必要というのが僕の見解です。(※この点に関して別の見解をお持ちの方はご意見ください。)

 

 となると、不動産を所有している会社の株式については、この点においても大きく相続税上の時価と法人税上の時価が異なることとなります。

 

 

 

たな卸資産に該当する不動産を所有している場合の土地保有特定会社の判定

 

 ここからは余談ですが、もう一つ不動産を所有している会社の株式評価でややこしいポイントをひとつご紹介しておきます。

 

 たな卸資産に該当する土地を所有している場合、その評価会社について土地保有特定会社に該当するか否かを判断する際に、そのたな卸資産である土地を含めるのかどうかという問題です。

 

 いかがでしょうか?

 

 実は、この問題については、国税庁HPの質疑応答事例で答えがでていますので、それをご紹介しておきます。

 

不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等の取扱い

 

【照会要旨】

 

土地保有特定会社の株式に該当するかどうかの判定において、評価会社の有する各資産の価額の合計額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合を求める際、不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等については、判定の基礎(土地等)に含まれるのでしょうか。

 

【回答要旨】

 

判定の基礎に含まれます

 

(理由)

 

  判定の基礎となる土地等(土地及び土地の上に存する権利)は、所有目的や所有期間のいかんにかかわらず、評価会社が有している全てのものを含むこととしていますので、たな卸資産に該当する土地等も含まれることになります。

 

 なお、この場合の土地等の価額は、財産評価基本通達4-2(不動産のうちたな卸資産に該当するものの評価)の定めにより同132(評価単位)及び同133(たな卸商品等の評価)により評価します。

 

 

 このように、土地保有特定会社の判定に含めるんですが、それはあくまでたな卸資産として評価した価額を含めるというところがポイントです。

 

 

 該当するケースは少ないんでしょうけど、いざ出てきたら税理士でも判断を間違いそうなポイントですね〜。

 

 土地は金額が大きくなることが多いですから、非上場会社の株式等を評価する際には、不動産の取扱いを細かく理解しておかないと時価の判定を大きく間違うことがありますのでご注意を!

 

 

 これまた自戒をこめて・・・

 

 

 

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駐車場付き賃貸マンションの事例から財産評価における評価単位の考え方をおさらい! https://hisohisofudosan.com/blog/779 Sun, 10 Jun 2018 14:30:09 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=779  土地の評財産価に関して、同業者と話をしていても「あれ、この人ちょっと誤解しているな。」と思う場面がちょこちょこあります。       見落とされがちな《評価上の区分》の話   ...続きを読む

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 土地の評財産価に関して、同業者と話をしていても「あれ、この人ちょっと誤解しているな。」と思う場面がちょこちょこあります。

 

 

 

見落とされがちな《評価上の区分》の話

 

 

 土地の評価について、その利用の単位について頭を悩ませることがあります。

 

 自分自身もたまに悩みますし、相談者や同業者から相談されることもあります。

 

 で、その相談に乗っていると、「評価上の区分」の話を置き去りにして、いきなり「評価単位」の話に入るので「おいおい、ちょっと待ってよ。」って思うことがあります。

 

 この時点で「?」の人は、この後の話をしっかり理解しないととんでもない失敗をしてしまうかもしれませんよ。

 

 解説の前に、例題を出してみます。

 

 

 A~Eの計6筆の土地を評価するとします。

 

 A・Bの土地の上に賃貸マンションが建っており、Cは駐車場となっています。

 

 Dには住居が建ち、Eは農地、Fは原野となっています。

 

 

 《質問》

 あなたならこの6筆をどのように評価しますか?

 

 

 まず始めに何を確認するかで、先の「評価上の区分」と「評価単位」をきちんと理解しているかどうかがわかります。

 

 いきなり「A~Eの土地の取得者は、同一の者ですか?」とか聞かないでくださいよ。  

 

 財産評価基本通達7に(土地の評価上の区分)があり、7−2に(評価単位)があります。

 

 財産評価基本通達7は長ったらしいので図にまとめると下のようになります。

 

 

 

 

 これって、多少相続の実務を齧ったことのある人でも案外盲点になってるんじゃないかと思います。

 

 評価単位を考える前に、この基準による区分をしっかりしないといけません!

 

 あとでみますが、評価単位のことばっかり頭にあって「この住居は自宅なのかな?貸家なのかな?」とか「この農地は自分が耕作しているものなのかな?」とか考えてはいけません笑

 

 まず大原則として、土地は「地目の別に評価」するんです!

 

 宅地は宅地、雑種地は雑種地、農地は農地です。

 

 これを例題に当てはめるとABとCは別評価、DEFもそれぞれ別評価ということになります。

 

 次に、確認すべきが2つの特例にあたらないかどうかという点です。

 

 「一体利用特例」なんて呼ばれたりしますが、特例①により、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうち主たる地目からなるものとして評価するんです。

 

 ここで初めてCがマンションの専用駐車場であるか否かを確認する必要が生じます。

 

 もし専用駐車場であれば、Cの雑種地は、地目が異なるにも関わらず、ABと同様に宅地として評価するのかなということになります。

 

 ちょっと難しいのが何をもって一体利用と言うかということですね・・・

 

 これは、いろいろな状況があり得るのでなかなか一言で言いにくいですが、あえて算式にするとこんな感じでしょうか。

 

 


一体利用=隣接密接不可分 


 

 

 よく例にあがるのが、ゴルフ練習場用地です。

 

 建物が建っている宅地とボールが飛んでいく芝生の部分(雑種地)の例です。

 

 結論とすると、これは芝生部分の利用が主であるため、全体を雑種地として評価することになります。

 

 ポイントは、宅地と雑種地が隣接していること、そして、打席と芝生が切っても切れない関係にあるということです。

 

 では、上の例題に戻って、DEFの土地はいかがでしょうか?

 

 原則に従えば、それぞれバラバラに評価することになりますが、例えば、Dは自宅用地でEの畑も自身で耕作する自用農地であったとしたらDとEは特例①を適用してまとめて宅地評価ということになりますか?

 

 ならないですよね。

 

 隣接はしていますが、自宅と畑は密接不可分の関係にはありませんから。

 

 では、EとFはいかがでしょうか?

 

 ともに自用農地と自用原野であったとしましょう。

 

 今日の本題ではないのでさらっといきますが、特例②の文章の通りEFは、その形状も大きさも位置も同様であるため、2つの土地をまとめて評価する可能性が高いですね。

 

 

 

同一人取得と自用か否か

 

 

 土地の評価の単位を考えるとき、まず始めに考えるのは「同一人取得か否か」と「自用か否か」という2点ではないでしょうか?

 

 しかし、これは本来、上で見た利用の区分を明確にした上で、さらに利用の単位ごとに分ける際の判定基準なんですね。

 

 

 

「同一人取得」

・・・自己の自由な使用収益権が得られるか

 

「自用」

・・・なんらかの権利(借地権等)の目的となっている宅地で、所有者の自由な使用収益権に制約が付されているか

 

 

 

 上の例題でA~Cについて、改めて確認すると、Cが専用駐車場ならA~Cを宅地として評価することはわかりました。

 

 A~Cがすべて同一の者が取得したのであれば、話が分かりやすいですが、Cだけ別の人間が取得したとしたらどうでしょう?

 

 ABの所有者からするとC土地の使用収益権を自由にすることはできません

 

 そうするとABは一体評価、Cは別評価ということになるんですね。

 

 いかがですか?

 

 たまたま同じ答えにたどり着いたとしても、考えるロジックが全然違ったとしたら、応用的な事例が出たときに対処できない可能性がありますよ。

 

 評価単位については、「評価単位をチェックして相続税・固定資産税の誤りを見抜け!」に詳しい。

 

 

 

駐車場付きの賃貸マンションのケース

 

 

 相続の実務でよく登場する駐車場付きの賃貸マンションですが、上の例題でCがマンションの専用駐車場であれば、合わせて1利用単位とされるし、もしその駐車場の利用者に賃貸マンションの入居者とそれ以外の者が混在しているとしたらどうでしょう?

 

 そうなると「密接不可分」要件に当てはまらなくなり、雑種地であるCを宅地のABと一体評価する必然性がなくなります

 

 そして、この場合に注意しなければならないのが、賃貸マンションの入居者の利用部分とそれ以外の者が利用する部分を物理的に分けて、前者だけをマンション敷地と一体で評価するとか、前者と後者の占める割合を用いて按分計算をするというようなことはしないということです。

 

 C土地全部をABと切り離して単独で(自用地)評価するということです。

 

 では、こんなケースはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 マンションの専用駐車場が、道路を挟んで向かいにある場合です。

 

 これも、利用の区分から考えれば分かりますね。

 

 ポイントは、特例①にあたるかどうか。あたらなければ原則どおり地目別評価です。

 

 ここまで整理して理解できれば簡単ですね。

 

 「隣接」要件を満たさずアウトですね!

 

 ということは、やはりCはABと切り離して単独(自用地)評価です。

 

 

 ロジックを理解できれば、少々難解な事例が出てきても評価単位で誤りを犯すことはなくなるんじゃないですか?

 

 相続税でも固定資産税でも土地の評価誤りの原因の大部分は、この評価単位の誤りに起因するんじゃないかなと思います・・・

 

 

 

 

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貸家建付地の評価で誤用しがちな『賃貸割合』の解釈のイロハ https://hisohisofudosan.com/blog/724 Sat, 02 Jun 2018 14:15:17 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=724  相続税の申告をする際、1件2件は貸家建付地の評価をすることとなることが多いですね。  案外何も考えずに公式に当てはめて評価してしまいがちですが・・・       貸家建付地とは? &nbs ...続きを読む

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 相続税の申告をする際、1件2件は貸家建付地の評価をすることとなることが多いですね。

 案外何も考えずに公式に当てはめて評価してしまいがちですが・・・

 

 

 

貸家建付地とは?

 

 

 相続実務に携わることのない方にとっては聞きなれない言葉かもしれませんが、「貸家建付地」とは、貸家の敷地の用に供されている宅地のことを言います。

 

 では「貸家」とは何でしょうか?

 

 「貸家」とは、借家権の目的となっている家屋のことです。

 

 ではでは、「借家権」とは何でしょうか?

 

 家屋の賃借権のうち借地借家法の規定により、借家人を保護する特別の取り扱いを受けるものです。

 

 借地借家法の規定により特別に保護される権利ということは、その家屋の貸借が賃貸借であることが前提であり、使用貸借は対象外であるとうことが一つ目のポイントです。

 

 使用貸借は、借地借家法の適用外だからです。

 

 つまり、使用貸借契約である家屋の敷地は、原則として貸家建付地の評価ではなく、自用地評価となります。

 

 マンションやアパートの一室について、被相続人の親族等が使用貸借により居住しているようなケースって結構ありますよね。

 

 相続実務において、案外マンション等のレントロールや被相続人の過年度の確定申告書により実際の賃料の収受状況を確認しないがために、親族等が使用貸借により貸借している部分まで貸家建付地評価を適用してしまっているようなケースが散見されます。

 

 

 

貸家建付地の評価方法

 

 

 では、そんな貸家建付地の具体的な評価方法を見てみましょう。

 

 


 


 

 

 算式は、上のようになります。

 

 借家権については、権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについては評価対象外です。

 

 この貸家とその敷地の権利関係の評価等をまとめると次のようになります。

 

 

 

  • (A)・・・ 貸家 《自用家屋評価×(1−b×c)》
  • (B)・・・ 貸家建付地 《自用地評価×(1−a×b×c)》 
  • (C)・・・ 借家権《自用家屋評価×b×d》
  • (D)・・・(借家人の有する権利部分)《自用地評価×a×b×c》

 

  • a・・・借地権割合
  • b・・・借家権割合
  • c・・・賃貸割合
  • d・・・賃借割合

 

 この辺りが整理できたところで、いよいよ今日の本題である「賃貸割合」についてみていきましょう。

 

 賃貸割合という概念自体は、実は案外歴史の浅いもので平成11年の財産評価基本通達の改正によって生まれたものです。

 

 その言葉の意味は、財産評価基本通達26の注書において「その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による。」と説明されています。

 

 そしてその算式というのが次のようなものです。

 

 


賃貸割合の算式


 

 

 今日二つ目のポイントは、この算式中の「課税時期において賃貸されている」という部分の解釈です。

 

 課税時期においてほんの一時的に空室であるだけで、ここから外されてしまうのでしょうか?

 

 ここから外されるということは、その部分は自用地評価とされるということと同じことを指します。

 

 ここまで見てきた算式を分解しながら考えれば分かります。

 

 実は、このポイントに関しては国税庁から情報(資産評価企画官情報第2号 平成11年7月29日)においてその判断基準が示されています。

 

 それによると、次の事実関係から総合的に判断せよとのことです。

 

  1. 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
  2. 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
  3. 空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
  4. 空室の期間が、課税時期の前後例えば1ヶ月程度であるなど一時的な期間であるかどうか
  5. 課税時期前後の賃貸が一時的なものではないかどうか

 

 要は、これらの要件を満たしていれば、相続発生時点で空室になっていたとしても、「課税時期において賃貸されている」ものとみなして、貸家建付地としての評価が可能ということです。

 

 

 

賃貸割合のさらなる理解

 

 

 ここまで読んでいただければ、なんとなく賃貸割合も理解できてマンションやアパート等の敷地の評価ができそうですね。

 

 ここから先は、上級者向けに賃貸割合に関してもう2つの情報をまとめておきます。

 

 まず1つ目は、上記の4番にある「空室の期間が一時的な期間であるかどうか」というポイントに関してですが、「例えば1ヶ月程度」と明記されているものの、裁決事例などをみていると空室期間が2〜3年であっても「賃貸されているもの」として貸家建付地評価が認められていますよということです。

 

 上記の(情報)を鵜呑みにして形式的に1ヶ月を基準に空室の判断をしていたら損をします。

 

 相続税の申告書がお手元にある方はぜひ、顧問税理士が賃貸割合をいくらにして評価しているのかチェックしてみてください。

 

 申告書作成の過程で「このマンションの○○号室の空室期間は1ヶ月を超えていますか、それ以内ですか?」なんて聞かれたことがある方は要注意!!笑

 

 税理士の理解不足の為に損をさせられたら溜まったもんじゃないですよね。

 

 そして2つ目ですが、こちらは逆に理科不足の為に賃貸割合を拡大解釈していませんか?というポイントです。

 

 ちょっと例題を出してみたいと思います。

 

 

 (例題)

 平成30年3月2日、Aにとって念願の収益マンションの建築が完了しました。

 無事に引渡しも完了し、完成前から入居が決まっていた賃借人の入居も進み、引き続き入居者の募集も行われています。

 全20室のうちちょうど半分の10室が埋まった平成30年6月2日「あと少しで採算にのるぞ」と意気揚々だったAが突然の急死

 さてこの場合のこの収益マンションの敷地の評価(賃貸割合)はどうなるでしょうか?

 

 

 皆さんなら賃貸割合は50%ですか?

 

 それとも完成から3ヶ月ですし、「2〜3ヶ月なら空室とみなさなくていいんでしょ?」てことで、強気に100%ですか?

 

 現実の実務では、残念ながらこんな事例にあたったことがないのですが、一般的な識者の判断をお伝えしておくと、正解は賃貸割合は50%となります。

 

 では、相続の発生から1ヶ月も経たないうちだったとしたらどうでしょう?(半室入居しているとして)

 

 答えは、それでも50%が正解です。 

 

 これは、とある判決で「相続開始時点に、いまだ賃貸されていない部屋が存在する場合は、当該部屋の客観的交換価値は、それが借家権の目的となっていないものとして評価するのが相当である」とはっきり示されているんです。

 

 上記の判断基準においても「課税時期前に継続的に賃貸されてきた」かどうか、や「退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われた」かどうかが問われていることからも、新築のため空室となっているものまで救済する規定でないことは読み取れますね。

 

 これはレアなシチュエーションですが、こんなケースに該当した場合には、賃貸割合とりすぎないように気を付けましょうね。。

 

 と、いいながら、申告書を受け取った税務署もここまで理解した上でみるのかどうかは甚だ疑問・・・

 

 

 

一戸建て貸家の場合(おまけ)

 

 

 もう一つ、おまけで問題です。

 

 これまでマンションやアパートを前提に話をしてきましたが、最近では一戸建ての貸家もチラホラみかけます。

 

 相続発生時点において、その数ヶ月前に賃借人との契約が切れて空き家となっていた場合はどうなでしょうか?

 

 課税時期前には継続して賃貸されていたし、前の賃借人が出て行ってからすぐに新たな賃借人の募集も行っています。

 

 空き家になってから、別の用途に供することもなく、相続発生から2ヶ月後には新たな入居者が決まったとします。

 

 この場合、この貸家の敷地の評価はどうなりますか?

 

 正解は、「自用地評価」です。ちなみに貸家は自用家屋評価。

 

 なんで?と思われるのも無理はないです。

 

 しかし、そもそも課税時期に空室があったとしても一定の要件を満たす場合には、貸家建付地評価を認めますよというこのある意味救済規定は、そもそもマンションやアパート等を前提に定められたものだからです。

 

 これまでの説明の中にこの答えを導き出すヒントは散りばめられていたのですが、気がつかなかったという方は、もう一度最初から読んでみてください・・・

 

 

 

 

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最近はリゾート会員権を所有している方の相続が多いですが、その評価はどうするの? https://hisohisofudosan.com/blog/706 Sun, 27 May 2018 03:50:51 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=706  最近の相続税の申告では、被相続人の方がリゾート会員権を所有しているケースが多いです。  リゾートトラスト社のエクシブや東急グループの東急ハーヴェストに代表されるリゾート会員権ですが、これらが相続財産となる場合どのように ...続きを読む

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 最近の相続税の申告では、被相続人の方がリゾート会員権を所有しているケースが多いです。

 リゾートトラスト社のエクシブや東急グループの東急ハーヴェストに代表されるリゾート会員権ですが、これらが相続財産となる場合どのように評価すればいいのでしょうか。

 

 

 

これらのリゾート会員権の特徴は

 

 

 これらのリゾート会員権の主な特徴は、次のようなものです。

 

 

  • 不動産売買契約施設相互利用契約によって構成される
  • どちらかの権利を単独で譲渡することはできない
  • 発行会社または関連の仲介業者等によって売買の斡旋が行われることにより取引相場が構成されている
  • 課税時期において契約解除する場合には、一定の方法により計算した清算金の返還がある

 

 

 このような特徴の会員権のなかでも、運営会社ごとに、また同じリゾート会員権のなかでも複数の制度が用意されていたりと複雑でわかりにくいものとなっています。

 

 実際、あるリゾート会員権の購入時の見積書をみると下のようになっています。

 

 

 

 これを見ると、不動産の所有権部分は、赤カッコ部分の4,454,000円であるのにそれ以外に様々な項目で費用がかかっているのが分かりますね。

 

 その費用が主にそのリゾート施設を優先的にかつ優遇条件で利用することができる権利の対価といえます。 

 

 

 

相続税の課税価格と財産評価基本通達

 

 

 さて、このようなリゾート会員権ですが、相続税の財産評価上はどのように取り扱われるのでしょうか。

 

 相続税の財産評価の原則に立ち返りながら考えてみましょう。

 

 まず、相続税法第22条において、財産の価額は原則として「時価」によるものとされています。

 

 

相続税法第22条 (評価の原則)

 (この章で特別の定めのあるものを除くほか、)相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

 

 

 そして、その「時価」については、財産評価基本通達1において次のように規定されています。

 

 

1(評価の原則)

 財産の評価については、次による。

 (1)評価単位

 財産の価額は、第2章以下に定める評価単位ごとに評価する。

 (2)時価の意義

 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条(定義)第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによつて評価した価額による

 (3)財産の評価

 財産の評価に当たつては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。

 

 

 ここで一番重要なことは、「時価」とは「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額ですよ」といいながら、その価額は「この通達の定めによって評価した価額なんですよ」としているところです。

 

 ここの論点についての考察は他のページに譲るとして、基本的には、この財産評価基本通達の定めに従って評価した価額が時価であり「相続税の課税価格」となるということです。

 

 では、リゾート会員権の評価についても財産評価基本通達の定め通りに評価すればいいんだなということになりますね。

 

 

 

不動産所有権付施設利用権(リゾート会員権)の評価方法

 

 

 ふむふむ、そういうわけで財産評価基本通達を繰っていってもリゾート会員権に関する記述が見当たりません。

 

 リゾート会員権自体が比較的新しい概念だからでしょうか、そもそもリゾート会員権について個別的に評価方法が定められていないんです。

 

 最近では、すごいスピードで個別性が高く特殊な商品というものが出てきますので、完全にこれらの商品(財産)の評価方法を定めることはまず不可能ですね。

 

 こんな時は、財産評価基本通達5の出番です。

 

 

 

 5(評価方法の定めのない財産の評価)

 この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する

 

 

 

 そうです。

 

 この通達に定められている財産で、比較的性質の近しいものを見つけてその評価方法に準じて評価しなさいよということになっているんです。

 

 しかし、この作業を納税者あるいは一税理士が行うことはなかなか困難です。

 

 すでに慣習として定着している解釈等があればいいですが。。

 

 でも、ことリゾート会員権については安心してください。

 

 国税庁の質疑応答事例「不動産所有権付リゾート会員権の評価」にきちんと回答が用意されているんです。

 

 リゾート会員権の評価についての照会に対して次のように回答されています。

 

 

 

 取引相場がある本件リゾート会員権については、「取引相場のあるゴルフ会員権の評価方法」に準じて、課税時期における通常の取引価格の70パーセント相当額により評価します。

 

(理由)

 リゾート会員権の取引は、ゴルフ会員権の取引と同様、上場株式のように公開された市場で行われるわけではなく、

 

  1. 会員権取引業者が仲介して行われる場合や所有者と取得者が直接取引する場合もあり、取引の態様は一様ではないこと
  2. 取引業者の仲介の場合の価格形成も業者ごとによりバラツキが生じるのが通常であること

 

 から、その取引価額を基礎として評価するにしても、評価上の安全性を考慮して評価する必要があります。

 ゴルフ会員権の場合、通常の取引価格の70パーセント相当額により評価することとしているのは、上記 及び の事情を踏まえて評価上の安全性を考慮したものであり、本件リゾート会員権の取引も同様の事情にあると認められるため、課税時期における通常の取引価格の70パーセント相当額により評価します。

 なお、取引相場がある場合においても、契約者の死亡により直ちに契約を解除することは可能であることから、「契約解除する場合の清算金」に基づき評価する方法も考えられますが、会員権に取引価格がある場合には、清算金の価額も結果的に、取引価格に反映されるものと考えられることから、特段の事由がない限り「取引相場のあるゴルフ会員権の評価方法」に準じて通常の取引価格の70パーセント相当額により評価します。

 

 

 

 評価方法もその評価によることの理由についても非常に明確に示されていますね。

 

 結論としては、ゴルフ会員権の評価方法に準じて「通常の取引価格×70%」により評価することとなります。

 

 70%というのは、解説にあるように価格形成にバラツキがあるため、保守的に定められたものなんでしょうね。

 

 土地の路線価がおよそ時価の80%とされていることと理由は同じですが、国税庁は土地よりもゴルフ会員権の方がバラツキが大きいと考えているということなんでしょうね。

 

 相続税の節税を考える場合、この実質的には「時価と評価額のギャップ」となるこの乖離を上手く活用したいものです。

 

 

 

 

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都市計画道路予定地の相続税評価における予定地の地積割合出すのって案外難しいよね https://hisohisofudosan.com/blog/683 Sun, 13 May 2018 12:53:57 +0000 https://hisohisofudosan.com/?p=683  財産評価基本通達24−7に「都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価」という項目があります。  相続財産である評価対象地のうちに都市計画道路予定地の区域内となる部分がある場合に、その地区区分、容積率、地積割合(その宅 ...続きを読む

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 財産評価基本通達24−7に「都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価」という項目があります。

 相続財産である評価対象地のうちに都市計画道路予定地の区域内となる部分がある場合に、その地区区分容積率地積割合(その宅地の総地積に対する都市計画道路予定地の部分の地積の割合)の別に応じて減額補正がかけられるというものです。

 

 

 

重要な役所調査

 

 

 今では、都市計画図がHPで公開されている役所が多いですが、基本的には役所の都市計画課などで都市計画図を閲覧ないし、写しの交付を受けることとなります。

 

 たしか大阪市役所では、機械からプリントアウトできます。

 

 最近大阪府の守口市で入手した都市計画図を見てみましょう。

 

 

 

 

 まずはこの「都市計画分布図」のようなおおまかな図により、都市計画道路の大体の位置関係を把握します。

 

 そして、次のような細かなエリアごとに確認します。

 

 

 

 

 例えば、図の佐太中町というエリアに都市計画道路(予定地)が走っていますね。

 

 評価の対象地の一部が都市計画道路予定地にかかっているとした場合、「よし、評価減できるポイントをみつけたぞ」となるわけですが、実際詳細な評価計算をする際に困ることがよくあります。

 

 というのも、一般的に備え置かれている都市計画図は縮尺が粗いことが多く、そもそもかかっているかどうかの判定や地積割合の正確な計算ができないんです。

 

 小さな縮尺なのに1mmくらいの太い線で明示されており、拡大してみても線の内側をとる場合と外側でとる場合ですごく数字が変わってしまうなんてこともよくあります。

 

 また、これを別の地図に置き換えるとどこを計画道路が走っているのかよく分からなくなりますよね。

 

 上記の都市計画図の赤丸エリアの公図が下の図です。

 

 この図でいうと例えば45や46、48−1といった土地の評価の際困りますよね。

 

 案外知られていないんですが、地図や測量図を持参して申請すれば、どこが該当部分か明示してくれる市役所もありますのできちんと評価をだすためにはここまでしないといけません。

 

 役所によって名前が異なるようですが、ちなみに守口市では「都市計画施設(道路・公園)明示申請書」といいます。

 

 

 

 

 

制限の割に小さな減額補正

 

 

 そもそも、都市計画道路予定地に減額補正がかかるのは、いずれ道路用地として買収されるため大きな利用制限があります。

 

 都市計画事業の決定から完成までの流れは次のような感じです。

 

 


 

都市計画の決定 → 事業認可 → 完成

 


 

 

 このうち事業認可の前の段階では、都市計画道路、都市計画公園・緑地等の区域内で、「建築物の建築」をしようとするときは、都市計画法第53条の規定による許可(知事の許可)が必要となります。

 

 

 ※「知事の許可」が例外的に不要なもの

  1. 軽易な行為
  2. 非常災害のための応急措置
  3. 都市計画事業としても行為

 

 

 また、事業認可後の段階になると、上の「建築物の建築」のほか「工作物の建設」や「土地形質の変更」「5トン超の物件の放置、設置、堆積」についても知事の許可が必要となります。

 

 宅地としても利用価値が著しく毀損しているといえる都市計画道路予定地区域内の宅地ですが、相続税評価による補正率は次の表の通りです。

 

 

 

 

 容積率700%以上のビル街地区・高度商業地区で地積割合が60%以上あって初めて補正率0.50、つまり50%の減額です。

 

 そもそも容積率が高いエリアの方が本来土地の高度利用が可能ですので、それが制限される損失も大きいため減額が大きくなってしかるべきですが、この表の容積率の3区分で果たして実態を反映できているのかという疑問もあります。

 

 表をみると、住宅地区なんてほとんど考慮されていませんよね・・・

 

 地積割合に応じて減額幅に差があることも理解できますが、実際都市計画道路予定地部分を切り取られた残地が、その都市計画のせいでものすごく不整形になるなど、大きく価値が毀損されてしまうことがありますがそこまで考慮されているかというと甚だ疑問です。

 

 もちろんそれらについては、補償金でカバーされていたりということがあるんでしょうけど。。。

 

 なんせ、実態ほどの減額がとれないことが多いように思います。

 

 かなり実感と異なる場合には、鑑定士による鑑定評価額の利用も検討した方がいいかもしれませんね。

 

 

 まぁ少なくとも役所調査等により、都市計画道路予定地に該当することを把握できていないと話になりませんけど。

 

 

 

容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の一部が都市計画道路予定地の区域内となる宅地の評価

 

 

 これはおまけですが、関連する論点として上記タイトルの質疑応答事例が国税庁HPにあがっているので紹介しておきます。

 

 

 質疑応答事例のケースのそのまんまですが、上図のようなケースの場合、先に見た「都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価」に定める補正率表の適用にあたって使用する容積率は何%でしょうか?というのが問いです。

 

 参考にあるように都市計画道路予定地に係る部分が該当する容積率を用いるという考え方(=①)と、各容積率を加重平均して求められる容積率を用いるという考え方(=②)の2つがあります。

 

 これは、実態に即して考えればわかりますよね。

 

 答えはです。

 

 建築基準法でこのような土地の全体の容積率が加重平均しなさいよとなっているんで、やはり①より②の考え方の方が理にかなっていますよね。

 

 

 

 ちょっと最後は脇道に話がそれましたが、要は役所調査により都市計画道路予定地に該当する部分がないかどうかチェックをしよう、該当しそうであれば、申請して正確に該当部分を認識しようという話でした。

 

 

 

 

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投稿 今までスルーしてきたけど謎の『建築線』について調べてみた!税理士と不動産のプロ達による不動産相続のヒソヒソ話 に最初に表示されました。

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 今回のテーマは「建築線」です。

 これまで何度か目にしながらも、大して調べもせずスルーしてきたこのテーマについて調べたことをまとめようと思います。

 

 

 

大阪市にある「船場建築線」とは

 

 

 僕が初めて「建築線」という言葉を目にしたのは、大阪市の固定資産税評価要領で大阪市の定める所要の補正について調べていた時だったと思います。

 

 

《建築線指定を受けている土地の評価》

 

建築基準法附則第5項の規定にいう建築線指定を受け、現に建築制限を受け ている土地を評価する場合は、次の算式により求めた補正率によって補正する ことができる。

 

 なお、補正率の端数処理は、小数点以下切捨てとする。

 

 

 これを読んだ時には、「建築線」についてはよく分からないながらも、固定資産税の世界ではセットバックについて相続税と比べて極めて厳しい取り扱いとなっているのに、建築線(による建築制限)についてはかなり減額補正が認められるんだなと思いました。

 

 余談にはなりますが、固定資産税の世界では、たとえ所有する敷地の一部がセットバックを要する土地であっても「該当部分がすでに公衆用道路の用に供されていること(及び分筆されているかまたは客観的な隔たりがあることまで求められる市町村が多い)」という要件を満たさないと非課税になりません。

 

 相続税のような実際にはまだセットバックしていなくても「セットバックすべき部分については、通常どおりに評価した価額から70%相当額を控除して評価」することができるという規定は存在しません。

 

 それに対して、この建築線にかかる所要の補正については「現に建築制限を受け ている」のであれば大きな減額補正が受けられることとなります。

 

 ただ、この言葉、曲者です。

 

 「現に建築制限を受け ている」とは、どのような状況を指すのでしょうか。

 

 その制限により建物を建築できていない(私道)状態のみを指すのか、それとも建て替えに際して後退しなければいけない状況をも包含するのでしょうか。

 

 おそらくは前者なんでしょうね。

 

 しかし、それであれば(不特定多数の者の通行の用に供している前提で)非課税申告書をだして非課税にしてもらえるからこんな補正は不要なのではないかとも考えられます。

 

 建築線の指定は地上に限られ、地下については建築可能(後述)であるため、逆に地上は後退して地下だけ利用している場合でも10%ないし20%は課税として扱いますよという規定なんでしょうか。。

 

 これは、実際まだ実務で大阪市と折衝をしたことがないので、どのような取り扱いとなるのか分からないのでお茶を濁すことになり、申し訳ありません笑

 

 実例が出ればまたご報告します。

 

 そもそも「路線価に反映してますので、減額補正の適用はありません。」といったピントのずれた答えが返ってきそうな気もしますが。。笑

 

 

 参考までに大阪市HPに掲載されている「船場建築線の指定状況」という図を貼付しておきます。

 

 

 

 

 

建築線とはそもそも何なのか?

 

 

 では、その「建築線」とはそもそも何なのでしょうか?

 

 建築線とは、一言で言うと(建築基準法ができる前に存在した)旧市街地建築物法(大正8年4月法律第37号)に規定された建築物が接していなければならない線のことです。

 

 では、なぜそんな古い法律による規制がいまも出てくるのかというと、いまの建築基準法の附則において次のような規定があるからです。

 

 

(この法律施行前に指定された建築線)

5 市街地建築物法第七条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が四メートル以上のものは、その建築線の位置にこの法律第四十二条第一項第五号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。

 

 

 要は、前面道路の幅員が4M以上必要とされた昔の建築線で、実際には幅員が4M未満のものについては、いわゆる「位置指定道路」として扱われているということです。

 

 また、たとえ道路状に整備されていなくても、その上に建築物を建築することはできません。(地下については建築可能)

 

 

 

建築線の指定のある土地の相続税評価

 

 

 さて、その「建築線」の指定のある土地の相続税評価についてですが、上でみたように建築基準法上の取り扱いは「位置指定道路」ですので、原則は「私道」の評価となりそうですね。

 

 そして、道路幅員の制限から後退が必要ですのでセットバックに準じた取り扱いも勘案する必要がありそうです。

 

 

 【後退していない場合】

  通常どおりに評価した価額から70%相当額を控除して評価

 

 

 【後退している場合】

 ・不特定多数の通行の用に供している

  その私道の価額は評価しない

 

 ・専ら特定の者の通行の用に供している

  自用地評価額の30%相当額で評価する

 

 

 

 ここまでは、なんとなく想像力を働かせることで理解できそうです。

 

 一つ、一筋縄にいかないのは、上で見た(地上は後退しても)地下を利用している場合です。

 

 地下は利用していても、地上は不特定多数の者に使わせていれば評価なしでいいのでしょうか。

 

 そんなわけには行きませんよね。

 

 このような場合の評価についてははっきりと規定がありませんが、地下部分について区分地上権を設定している場合と同様に考えられるような場合には「区分地上権の目的となっている宅地の評価」に準じて評価することになるんでしょうね。

 

 

 

 

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